第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

鎮痛・鎮静・せん妄 症例

[P34] 一般演題・ポスター34
鎮痛・鎮静・せん妄 症例01

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場14 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:山﨑 正記(京都府立医科大学附属病院集中治療部)

[P34-4] 極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症患者における全身麻酔の一例

谷中 亜由美1, 植田 裕史1, 高橋 伸二2 (1.筑波大学附属病院 麻酔科, 2.筑波大学医学医療系 麻酔・蘇生学)

【背景】極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(very long-chain acyl-CoA dehydrogenase deficiency; VLCADD)患者は16万人に1人の割合で存在すると言われている。VLCADD患者は内因性および外因性の脂肪酸代謝阻害によりエネルギー産生が障害されるため、飢餓、運動、ストレス等を誘引とする異化亢進により横紋筋融解症を発症しうる。また、脂肪酸代謝阻害により使用可能な麻酔薬も限定されている。ゆえに、全身麻酔の報告例は稀である。今回、VLCADD患者の全身麻酔を経験したため報告する。【臨床経過】VLCADD以外既往のない26歳女性。以前から感冒やストレスにより頚部から肩にかけての筋痛の症状を呈し、横紋筋融解を発症し複数回の入院歴があった。今回、慢性虫垂炎に対して腹腔鏡下虫垂切除術が予定された。VLCADD患者において長鎖脂肪酸を含む麻酔薬(プロポフォールやエトミデート)や、揮発性吸入麻酔薬の使用は横紋筋融解を惹起すると言われており、推奨されていない。麻酔導入は酸素6 L/分で5分間酸素化した後、ミダゾラム0.2 mg/kg/hrで開始し、ロクロニウム0.8 mg/kgを投与した。その後、経口気管挿管をした。麻酔維持はミダゾラム、レミフェンタニル0.2~0.5 μg/kg/minで投与し、BIS 40~60を目標とした。術中の補液はフィジオ(R)140(1 %ブドウ糖加酢酸リンゲル液)で行った。手術終了後、全身麻酔から遅延なく覚醒し、抜管した上で集中治療室へ帰室した。術後1日目にCK上昇および筋痛が生じ、横紋筋融解と診断された。また、術後嘔気も出現した。CKは最大7602 U/Lまで上昇し、術後3日目でCKはピークアウトした。筋痛は術後1日目から頚部に出現したが2日目には改善を示した。その後、問題なく術後5日目に退院した。【結論】VLCADD患者において、プロポフォール・揮発性吸入麻酔薬を使用せずに全身麻酔を行い、大きな合併症はなく経過した。術中だけでなく術後も厳密な血糖・CKモニタリング、術後嘔気予防をし、周術期ストレスの軽減を行うことが肝要である。