第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

循環 症例

[P37] 一般演題・ポスター37
循環 症例05

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:40 ポスター会場17 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:中里 桂子(かわぐち心臓呼吸器病院麻酔科)

[P37-4] 収縮性心外膜炎を疑われていた左総腸骨動脈瘤静脈穿破の一例

野地 善恵1, 眞鍋 奈緒美2, 本田 潤1, 井石 雄三1, 大石 理江子1, 箱崎 貴大1, 小原 伸樹1, 五十洲 剛1, 村川 雅洋1 (1.福島県立医科大学 医学部 麻酔科学講座, 2.福島県立医科大学ふたば救急総合医療支援センター)

【症例】70歳、男性【主訴】倦怠感、息切れ、浮腫【既往歴】高血圧症、高尿酸血症【経過】倦怠感、息切れのため近医を受診した。心不全の疑いで、フロセミド60mg/日を投与されたが改善なく、第3病日には下腿浮腫と右胸水をきたした。第8病日に精査加療目的に前医に入院となった。経胸壁心エコー検査ではLVEF 69.6%、CT検査では心膜肥厚は明らかではなかったが、拡張期のseptal bounceがあり、収縮性心外膜炎を疑われた。フロセミドやトルバプタンを投与されていたが、徐々に腎機能が悪化し、第36病日にはBUN 74 mg/dl、Cre 2.48 mg/dlとなった。第42病日の肺動脈カテーテル検査ではRV圧波形がdip and plateauを呈し、収縮性心外膜炎と診断された。第43病日、利尿薬への反応が乏しくなり、肺水腫が悪化し、血液透析が施行された。第44病日の透析の際に著明に血圧が低下し、除水継続は不可能となった。早期の手術が望ましく、周術期の集中治療を要するため第45病日に当院に紹介、転院となった。 転院時、BUN 117 mg/dl、Cre 5.85 mg/dl、AST 45 U/l、ALT 72 U/l、γ-GTP 147 U/l、TB 8.0 mg/dlと腎・肝機能障害があった。当院で行った経胸壁心エコー検査では収縮性心外膜炎所見は明らかではなく、改めて第12病日の造影CTを見返すと左総腸骨動脈に動脈瘤があり、左総腸骨静脈に穿破していた。第46病日、人工血管置換術が施行されることとなったが、全身麻酔導入後に心停止となり、心肺蘇生を行い自己心拍は再開した。人工血管置換術の耐術能はないと判断され、動静脈シャントの閉鎖と大腿動脈のバイパス術が行われた。術後は腎・肝機能は回復したが、意識障害(E1 VT M1)が遷延し心停止の際の低酸素脳症の影響が考えられた。【考察】 多臓器不全を伴う収縮性心外膜炎と考えられていたが、実際には左総腸骨動脈瘤の静脈穿破であった。静脈圧上昇に伴う、鬱血腎と鬱血肝により臓器障害を来していたと考えられる。一度、心臓の検査で収縮性心外膜炎が疑われた場合にも多臓器不全が進行する場合には他の原因を念頭に置き全身の検索が必要であると考えられた。