第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

循環 症例

[P38] 一般演題・ポスター38
循環 症例06

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場18 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:山口 和将(公立昭和病院 救急科)

[P38-3] 低心機能患者に対する巨大肺嚢胞切除術の周術期管理

松本 友里, 長江 正晴, 古島 夏奈, 三住 拓誉, 巻野 将平, 江木 盛時, 溝渕 知司 (神戸大学 医学部附属病院 麻酔科)

【背景】
巨大肺嚢胞は呼吸器系の基礎疾患に併発し、術前からの呼吸機能低下によりその手術リスクは非常に高い。さらに心機能低下を合併している場合は、術中を含む周術期管理が極めて困難なものになる。今回、低心機能患者に対する巨大肺嚢胞切除術においてECMO(Extracorporeal membrane oxygenation)を用いて管理し救命した症例を経験したので報告する。
【臨床経過】
50歳代男性、身長177cm、体重44kg。
両側の巨大肺嚢胞を指摘されていたが長年放置していた。45歳時に左外傷性気胸に対しドレナージ治療を受けた既往がある。呼吸苦を自覚し前医を受診したところ、胸部Xpで巨大肺嚢胞の増大と経皮的酸素飽和度(SpO2)の低下を認めたため、精査加療目的に当院へ紹介となった。
入院時は意識清明、経鼻酸素2L/分投与下でSpO2 97%、呼吸回数は30回/分であった。胸部CTで右胸腔の大部分を占める巨大肺嚢胞を認め、左肺にも多数の嚢胞病変がみられた。縦隔の左側偏移、残存肺の気腫性変化も認めた。また心臓超音波検査では、ejection fraction(EF)は40%、後部中隔基部~下壁基部の収縮能低下を認め、三尖弁圧較差は40mmHgと肺高血圧の所見であった。肺嚢胞は増大傾向で呼吸状態の改善も乏しいため、胸腔鏡下肺嚢胞切除術が計画された。
大腿静脈脱血-大腿動脈送血によるVA ECMO用の血管を確保後、レミフェンタニル、フェンタニル、プロポフォール、ロクロニウムを投与し麻酔導入を行った。麻酔導入後、収縮期血圧は70mmHg台まで低下しSpO2も90%を下回った。直後の経食道心エコーでEF 20%程度のびまん性の左室収縮能の低下を認めた。ECMO開始後の流量を調整し循環を維持しつつ、左半側臥位、分離肺換気のもと手術を施行した。
術後も心機能の低下が持続したためECMOを継続しつつ、カテコラミンの投与や人工呼吸管理を含めた集中治療管理を行った。術後2日目(POD2)に胸部Xpで右胸腔内に血腫の貯留を認めたため、再開胸血腫除去術を行い同時に送血管の位置を右鎖骨下動脈に変更した。その後循環動態は劇的に改善しEF60%前後まで改善した。POD13にはECMOを離脱することができ、POD33にICU退室となった。
【結論】
高度の心肺機能低下を有する患者に対してECMOを用いる際は、自己の心機能や呼吸状態を考慮しつつ送脱血の位置を含めた血管アクセスの部位を検討する必要がある。本症例も送血管の位置を変更することにより全身状態は改善し良好な経過を得る事が出来た。