[P39-5] 虚血性心筋症を伴う重症大動脈弁狭窄症の心原性ショックにImpellaによる循環補助が有効であった一例
【背景】我が国に心原性ショック(CS)に対する循環補助デバイス, Impellaが導入された。CSの概念は,pre shockからprofound shockまで幅広い状態を包括するが,早期診断,介入が重要である。重症大動脈弁狭窄症(AS)は薬物治療によるコントロールが難しく, CSや心不全に陥ると不幸な転帰を辿る患者も少なくない。重症ASに対するImpella使用は原則禁忌とされているが,大動脈弁バルーン形成術(BAV)施行によりImpella留置が可能となり,循環動態安定化を図ることができる。Impellaサポート下にBAV, 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行しCSを脱することが出来た一例をここに報告する。【臨床経過】92歳, 女性。呼吸困難を主訴に当院に救急搬送。入院時, 意識清明, BP 177/100mmHg, HR 160bpm(不整), BT 37.2度, RR 40/min, SpO2 95%(O2 10Lリザーバー)であった。聴診上, 第二肋間胸骨右縁にLevine II/VIの収縮期雑音およびIII音, また両側背側にcoarse crackleを認めた。頻脈性AFであったが明らかなST変化は認めず, 心臓超音波検査でびまん性の壁運動低下と重症ASを認めた(大動脈弁逆流症(AR)は認めず)。非侵襲的陽圧呼吸(NPPV), GTN静注を中心とした心不全加療に加え, landiolol, diltiazem静注によるレートコントロールを試みた。しかしレートコントロールは困難で, 心不全コントロールがつかず, 電気的除細動を施行。洞調律に復帰したが, その後も利尿薬投与に対する反応性乏しく, 心不全は悪化し, 第2病日に気管挿管。また徐々に血圧が低下(収縮期血圧70mmHg台)し, Noradrenalineの持続静注を要した。経過より, 薬物治療の限界と考え, 重症ASに対する早期介入の為, 同日カテーテル検査を施行。スワンガンツカテーテルで, CI 2.0 L/min/m2, PCWP 19 mmHgと低心拍出の状態を認め, 冠動脈造影検査では#1 90%, #2 90%, #6 90%, #7 90%, #11 75%と3枝病変を認めた。一期的にBAV, PCI施行の方針とした(入院後29時間,カテコラミン投与開始後7時間でBAV施行)。BAV施行直後にImpella挿入にて血行動態の安定を得た。続いてRCAとLADに対してPCIを施行。BAVに伴うAR出現などは認めず, その後カテコラミンおよびImpellaをweaningし, 第5病日にImpella抜去。第9病日に抜管し, 第16病日に一般病棟へ転出した。