[P39-4] 姑息術後の房室中隔欠損症患児に対し二心室修復を行ったが、術後の循環管理に難渋した一例
【背景】完全型房室中隔欠損症(cAVSD)は、先天性心疾患の約5%を占め、その多くがDown症候群(DS)を伴うが、肺血流量の増加から肺高血圧をきたすため、早期に心内修復術を行う、または姑息手術として肺動脈絞扼術を行うのが一般的な治療戦略である。しかし、DSでは肺高血圧が問題となるため、Fontan手術は難しいとされる。今回、機能的単心室症として姑息術を行ったDS患児に対し、二心室修復を行ったが、術後の循環管理に難渋した症例を経験したため報告する。
【臨床経過】症例は3歳、DSの男児、身長:85cm、体重:8.9kg。出生後の心臓超音波検査でcAVSD(左室低形成)、大動脈縮窄症、動脈管開存症を認めた。日齢13に他院でNorwood手術、右室-肺動脈導管手術が行われ、その後Fontan手術へ向け段階的治療が予定された。当院で1歳5か月時に行った心臓カテーテル検査では、二心室修復を考慮できる左室容積であり、房室弁逆流は軽度であった。左室の成長を促す目的で、1歳9か月時に右室-肺動脈導管交換術、肺動脈形成術を行い、当初の治療方針を変更して二心室修復を目指すこととした。3歳10か月時、Norwood手術を取り外し、心内修復術、右室流出路再建術を行った。手術時間8時間36分、人工心肺時間5時間36分。術後は鎮静挿管下で集中治療室へ入室した。手術翌日に肺高血圧クライシスと考えられる血圧低下、SpO2低下を認めたため、筋弛緩薬も併用して完全鎮静とし、一酸化窒素(NO)、シルデナフィルの使用を開始した。肺高血圧の管理に難渋したが、NO投与を術後5日目に終了し、術後6日目に抜管した。抜管後も啼泣に伴う血圧低下、SpO2低下を認め、適宜鎮静薬を要した。循環管理には昇圧薬としてドパミン、アドレナリン、バソプレシンを併用した。肺高血圧、心不全の状態が持続したが、徐々に改善を認め、術後18日目にカテコラミン投与を中止した。その後全身状態が安定し、術後38日目に自宅退院となった。
【結論】本症例は、Fontan手術を目標とした治療方針を変更し、長時間手術による術後管理に難渋することも想定した上で二心室修復を行った。DSにおけるFontan循環の中長期予後は未だ不明な点が多く、Fontan手術適応の決定は慎重に行う必要がある。当初の予想通り術後の肺高血圧、心不全管理に時間を要する結果となったが、最終的には良好な転帰を辿った1症例であった。
【臨床経過】症例は3歳、DSの男児、身長:85cm、体重:8.9kg。出生後の心臓超音波検査でcAVSD(左室低形成)、大動脈縮窄症、動脈管開存症を認めた。日齢13に他院でNorwood手術、右室-肺動脈導管手術が行われ、その後Fontan手術へ向け段階的治療が予定された。当院で1歳5か月時に行った心臓カテーテル検査では、二心室修復を考慮できる左室容積であり、房室弁逆流は軽度であった。左室の成長を促す目的で、1歳9か月時に右室-肺動脈導管交換術、肺動脈形成術を行い、当初の治療方針を変更して二心室修復を目指すこととした。3歳10か月時、Norwood手術を取り外し、心内修復術、右室流出路再建術を行った。手術時間8時間36分、人工心肺時間5時間36分。術後は鎮静挿管下で集中治療室へ入室した。手術翌日に肺高血圧クライシスと考えられる血圧低下、SpO2低下を認めたため、筋弛緩薬も併用して完全鎮静とし、一酸化窒素(NO)、シルデナフィルの使用を開始した。肺高血圧の管理に難渋したが、NO投与を術後5日目に終了し、術後6日目に抜管した。抜管後も啼泣に伴う血圧低下、SpO2低下を認め、適宜鎮静薬を要した。循環管理には昇圧薬としてドパミン、アドレナリン、バソプレシンを併用した。肺高血圧、心不全の状態が持続したが、徐々に改善を認め、術後18日目にカテコラミン投与を中止した。その後全身状態が安定し、術後38日目に自宅退院となった。
【結論】本症例は、Fontan手術を目標とした治療方針を変更し、長時間手術による術後管理に難渋することも想定した上で二心室修復を行った。DSにおけるFontan循環の中長期予後は未だ不明な点が多く、Fontan手術適応の決定は慎重に行う必要がある。当初の予想通り術後の肺高血圧、心不全管理に時間を要する結果となったが、最終的には良好な転帰を辿った1症例であった。