第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

循環 症例

[P39] 一般演題・ポスター39
循環 症例07

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:50 ポスター会場19 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:石原 嗣郎(日本医科大学武蔵小杉病院循環器内科)

[P39-6] 術中経食道心エコーで食道穿孔をおこした3症例への治療介入と予後

宮本 美希, 太田 隆嗣, 高木 芳人, 小出 康弘 (湘南鎌倉総合病院 麻酔科)

【背景】経食道心臓超音波(以下TEE)は経カテーテル的心臓手術において広く用いられている。一方でTEEによる食道穿孔(発生率0.01-0.03%)は重篤かつ致命的な合併症である。今回手術後に発生した食道穿孔3症例を経験したので報告する。【臨床経過】【1例目】80代女性。重症大動脈弁狭窄症(sAS)に対して全身麻酔下に経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)を行った。手術当日は特に症状無く経過したが、術後1日目から左側胸部痛と左胸水を認めた。術後4日目の透視で食道穿孔が診断された。胸腔ドレーンおよび内視鏡的にドレナージテーテルを留置し、抗生剤による保存的治療を開始した。術後2カ月で瘻孔は閉鎖したが、膿胸および感染性心内膜炎で術後159日目に死亡した。【2例目】80代女性。sASに対して局所麻酔・鎮静下にTAVRを行った。関節リウマチのためプレドニゾロン5mg/日を内服していた。手術終了後から淡血性の痰が認められ、術後ICUでの経過中に酸素化が悪化したため挿管・人工呼吸器管理となった。CTで食道穿孔が診断され、手術翌日にOver-The-Scope Clip(OTSC)を用いた内視鏡的縫縮術が施行された。術後2日目に抜管したが、術後5日目に呼吸状態の悪化に伴い再挿管となった。膿胸を認めたため穿刺ドレナージを行い、食道穿孔部の残存リークにもクリップを追加した。状態の安定を得たため抜管したが、経管栄養を開始した後に嘔吐、誤嚥性肺炎となり再々挿管となった。加療を継続したが敗血症により術後59日目に死亡した。【3例目】70代女性。重症僧帽弁閉鎖不全症に対して全身麻酔下に経皮的僧帽弁形成術を行った。るいそうがあり血液維持透析が導入されていた。術後1日目のレントゲンで右肺気胸が指摘され胸腔ドレーンが挿入された。術後3日目に意識レベルの低下、呼吸窮迫状態で発見され、CTで食道穿孔による重症敗血症の診断となった 。OTSCによる内視鏡的縫縮を2度行ったが穿孔部の完全閉鎖には至らなかった。抗生剤治療を継続するも敗血症により術後56日目に死亡した。【結語】経カテーテル的心臓手術の対象患者は並存疾患も多く、食道穿孔が発生した場合には致命的となる。臨床症状や画像所見からの早期発見と、抗菌薬・ドレナージによる積極的な感染管理が成功するならば予後は改善するかもしれない。