第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

新生児・小児

[P4] 一般演題・ポスター4
新生児・小児01

2019年3月1日(金) 11:00 〜 12:00 ポスター会場4 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:林 拓也(埼玉県立小児医療センター)

[P4-3] RSV細気管支炎に続発した重症ARDSに対し、長時間の腹臥位療法と経肺圧測定を行い救命できた一例

橋本 明佳1, 奥村 純平2, 青木 義紘2, 祖父江 俊樹2, 稲田 雄2, 籏智 武志2, 清水 義之2, 竹内 宗之2 (1.大阪急性期総合医療センター 麻酔科, 2.大阪母子医療センター)

重症ARDS(急性呼吸窮迫症候群)において、腹臥位管理や、経肺圧に基づく人工呼吸設定が有効であると考えられている。今回我々はRSV細気管支炎に続発した重症ARDSに対し、両治療法を行うことでECMO(体外式膜型人工肺)を用いずに生存退室できたと考えられる症例を経験したので報告する。症例2歳7ヵ月、76cm、9.5kgの男児。超低出生体重児、West症候群。当院受診4日前より分泌物が多く、水分摂取量が減少していた。来院時、RSV陽性、脱水、低体温32℃、徐脈を認め、全身管理目的にICU入室となった。入室時酸素化は不良で呼吸は不規則で浅いため、high flow nasal cannulaを装着し、細菌性肺炎、百日咳、非定型肺炎合併なども考慮し抗生剤加療も開始した。しかし、徐々に呼吸状態は増悪し、入室後約15時間で挿管、人工呼吸管理を開始した。挿管後約32時間で1日12時間以上の腹臥位管理を開始したが、PEEP10にて、P/F比は80と改善なく、泡沫状痰を気管チューブ内に認める状態であった。4日目に経肺圧測定とNO(一酸化窒素)吸入を開始した。7日目に、許容上限であるプラトー経肺圧25 cmH2O、Δ経肺圧12 cmH2Oまで上昇させ、PEEP19 cmH2O、プラトー圧34 cmH2Oとしたが、P/F 比は52、PaCO2 は100 mmHg となった。その際、ECMOの導入も検討したが、原疾患など総合的に判断し、導入しなかった。呼吸条件を微調整しながら、腹臥位管理を最長で連続約71時間行い、除水を強化することで徐々に酸素化、PaCO2共に改善した。しかし、NO使用下でもP/F200以下が続いたため、23日目にCTを施行し、続発性間質性肺炎の疑いでプレドニゾロンの投与を開始した。その後、状態は徐々に改善し、24日目にはNOを終了、36日目に気管切開、喉頭気管分離術を行い、38日目には在宅人工呼吸器に変更し、41日目にはICUをPEEP7 cmH2O、プレッシャーサポート9cmH2Oで退室した。本症例での腹臥位管理は、合計約446 時間、全入室時間の46 %に及んだが、前頸部に褥瘡を認めたこと以外で重篤な合併症を認めなかった。また経過中に仰臥位から腹臥位への体位変換による経肺圧への影響を調べたところ、腹臥位にすると呼気終末経肺圧が上昇しΔ経肺圧は逆に低下していた。本症例の腹臥位が経肺圧の観点からも肺保護的であることが確認できた。結語RSV細気管支炎に続発した重症ARDSを経験した。早期に腹臥位を導入し経肺圧を適宜モニタリングすることで適切な呼吸器設定を行え、生存退室を実現できた。