第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

新生児・小児

[P4] 一般演題・ポスター4
新生児・小児01

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 12:00 PM ポスター会場4 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:林 拓也(埼玉県立小児医療センター)

[P4-4] 心雑音の有無が、呼吸窮迫・不全を主訴に当院PICUへ入室した心疾患症例の予後を左右するか

杉村 洋子 (千葉県こども病院 集中治療科)

【背景】呼吸窮迫・不全を主訴とする乳幼児の重症者の中に、未診断の心疾患患者がいることは既知の事である。しかし、小児の心疾患には心雑音があるという認識が横行しているのも否めない印象がある。【目的】「心雑音がないと心疾患と認識することができず、対応が遅れ、予後に影響が出る」という仮説を立て、 心疾患には心雑音があるという一般的な認識が、初期対応及び予後に影響するか検討する。【方法】 2008年1月から2017年12月までに当院小児集中治療室PICUへ入室した3歳未満の症例に対する、単施設後方視的観察研究。アウトカムはPICUの生存退室とした。【結果】当該期間にPICU に入室した全2704 例中、3歳未満で呼吸不全・窮迫を主訴に入室したのは176例で、入室時に基礎疾患がないもしくは不明の症例は32例だった。心雑音があり、心疾患と認識され、外科的介入等の加療がされた5例をHM群とし、心雑音がなく精査の結果、心疾患と診断され、加療された9例をNHM群とした。基礎疾患のない呼吸器感染症による呼吸窮迫・不全の18例をR群とした。心疾患の内訳は、HM群は先天性僧帽弁閉鎖不全、特発性僧帽弁腱索断裂等で、NHM群は総肺静脈環流異常症、心筋炎、心筋症、ductal shockであった。診断遅延と前医での初期対応不良を1例ずつNHM群で認めた。HM群とNHM群で年齢、性別等の疾患背景に差は認めなかった。どちらの退室時転帰も良好で、入室期間(中央値15日 vs 11日)、人工呼吸期間(中央値8.5日 vs 13日)にも有意差を認めなかった。入室時胸部レントゲン写真の心胸郭比CTRも有意差(中央値61% vs 63%)は認めなかったが、R群と心疾患群を比較するとCTRは心疾患群が大きい傾向にあった(中央値50% vs 62%)。【結論】心雑音の有無は、呼吸窮迫・不全を主訴にPICUへ入室した未診断の心疾患症例の予後に影響を及ぼさなかった。これは、本研究の場所がPICU であったことが大きい交絡因子となった可能性がある。しかし、診断遅延や初期対応不良がNHM群にみられたことより、心疾患は心雑音があるという先入観を正していく必要があると考えた。