第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

新生児・小児

[P4] 一般演題・ポスター4
新生児・小児01

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 12:00 PM ポスター会場4 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:林 拓也(埼玉県立小児医療センター)

[P4-6] Ebstein奇形患児の両方向性Glenn手術後に左肺動脈血栓塞栓症をきたした1症例

幸野 真樹1, 津内 由紀子1, 朝垣 萌1, 森永 將裕1, 内田 要2, 何 廣頤1 (1.神奈川県立こども医療センター 麻酔科, 2.神奈川県立こども医療センター 集中治療科)

【背景】Ebstein奇形は新生児期に治療を要する症例から無治療で経過する症例まで、重症度の幅が広い。新生児期にStarnes手術、肺動脈絞扼術(PAB)等を行う重症例もあり、その後は乳児期以降に二心室修復を目指すか、あるいはGlenn手術を経てFontan型手術を行うかのいずれかとなる。今回、Ebstein奇形患児の両方向性Glenn(BDG)手術後に左肺動脈血栓塞栓症(左PE)をきたし、経胸壁心臓超音波検査(TTE)が診断に有用であった1症例を経験したので報告する。【臨床経過】生後4か月の女児、身長:61.3cm、体重:5.2kg。在胎28週でEpstein奇形を指摘され、在胎38週2日に予定帝王切開術で出生した。日齢1(生後22時間)で右房縫縮、主肺動脈結紮、両側PABを行った。その後再度循環不全が進行し、日齢2でStarnes手術を行った。呼吸循環管理の安定化に時間を要し、術後16日目で抜管した。動脈管開存維持のためアルプロスタジルアルファデクス持続投与はGlenn手術まで継続した。日齢95で行った心臓カテーテル検査では肺動脈圧13mmHg、肺血管抵抗値2.3単位・m2と肺高血圧は認めなかった。Glenn循環可能と判断し、日齢119でBDG手術と動脈管結紮術を施行し集中治療室(ICU)に入室した。手術時間3時間32分。術後経過は良好で、手術終了後30分で抜管し、術後4日目にはICUを退室した。一般病棟でも著変なく経過したが、術後10日目のTTEで左肺動脈の血流量が少ないことが判明した。翌日胸部造影CT検査を行い、左PEと診断し、新たな血栓形成防止のためヘパリン持続静注を開始した。この時点での現症は血圧:94/41mmHg、心拍数:121回/分、SpO2:88%(室内気)でバイタルサインに大きな変化はなく、カテコラミン投与も必要としなかった。術後13日目に全身麻酔下でのカテーテル治療により左肺動脈血栓を除去し、ワルファリンによる抗凝固療法を開始した。その後の経過は良好で、術後20日目(日齢140)に自宅退院となり、以後外来通院を継続している。【結論】本症例のように比較的大きなPEであっても、Glenn循環であれば右心負荷とならないためバイタルサインも変化せず、診断をつけることは非常に困難である。BDG手術後にPEを合併する頻度も低く、疑うことすら難しい。そのような中で今回、日常的に行っているTTEが、Ebstein奇形患児のBDG手術後に合併した左PEの診断に有用であった。