第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

消化管・肝・腎

[P40] 一般演題・ポスター40
消化管・肝・腎03

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場20 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:金本 匡史(群馬大学医学部附属病院 集中治療部)

[P40-3] 脊柱後弯症術後イレウスに起因する胸郭コンプライアンス低下により呼吸器管理を要した一例

進藤 俊介, 玉井 謙次, 金井 理一郎, 木村 慎一, 高橋 宏行 (済生会横浜市東部病院 集中治療科)

脊柱後弯症は胸郭の変形に伴う拘束性換気障害などが生じるといわれている。また、脊椎疾患術後の麻痺性イレウスの頻度は5-12%程度であり、重症化する頻度は少ないと報告されているものの、麻痺性イレウスが原因となり、呼吸状態の悪化をきたした症例は少ない。脊柱後弯症術後の麻痺性イレウスが原因となり、人工呼吸器管理を必要とした症例と経験したので報告する。症例は冠攣縮性狭心症の既往のある72歳男性。脊柱管狭窄症に対してTh3-S2の範囲で椎体固定術を施行した。術当日に呼吸器離脱し、術後第病1日に酸素化問題なく、一般病棟へ転出したが、腹部膨満感あり、麻痺性イレウスと診断した。その後急速な呼吸状態の悪化を認め、造影CTで絞扼性イレウス、肺塞栓症、肺炎や広範囲の無気肺などを否定し、術後第2病日にICUへ再入室した。NHF下でP/F 74、呼吸過多の状態であり、人工呼吸器管理としたが、P/F<100と改善は得られなかった。腹部は緊満し、膀胱内圧は12mmHgであり、腸閉塞に伴う胸郭コンプライアンスの低下を疑い、胃管に加えて入室から8時間後にイレウス管を留置した。イレウス管留置直後より一回換気量は250ml程度から400ml程度まで改善し、酸素化の改善も認め、術後第3病日にPEEP 5cmH2O下でP/F 286であったため、抜管した。その後はNHF下でP/F 150-200で、腹痛や背部痛の影響で容易に酸素悪化する状態認め、第6病日にイレウス管よりも胃管の排液増加し、CTで腸重積示唆され、保存的にイレウス管の位置調整などは改善なく、第9病日に回盲から70cmの腸重積部を切除した。その後は経過良好で第12病日に呼吸器再離脱し、その後は経鼻カニューレ下で良好な酸素化が得られ、第14病日にICU退室となった。器質的な肺疾患の合併がない脊柱後弯症の一般的な経過での麻痺性イレウスが肺コンプライアンスの急激な悪化を引き起こし、最終的に腸重積をも併発した経過に関して、予防や早期治療介入が可能であったか文献的考察を行った。