第46回日本集中治療医学会学術集会

Presentation information

一般演題(ポスター発表)

消化管・肝・腎

[P40] 一般演題・ポスター40
消化管・肝・腎03

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場20 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:金本 匡史(群馬大学医学部附属病院 集中治療部)

[P40-4] 腎移植後にStanfordA型大動脈解離を発症し、術後感染コントロールに難渋した症例

名倉 真紀子1, 玉井 亨1, 小林 大祐1, 越田 嘉尚1, 臼田 和生1, 上田 哲之2, 小宮 良輔3 (1.富山県立中央病院 集中治療科, 2.富山県立中央病院 心臓血管外科, 3.富山県立中央病院 麻酔科)

【背景】腎移植後長期にわたって免疫抑制剤を内服している高齢患者は易感染性であり、細菌感染症が重症化しやすく、致命的になることがある。今回、腎移植後にStanfordA型大動脈解離を発症し、感染リスクを避けるため、移植腎廃絶のリスクを負った上でステロイド以外の免疫抑制剤を休薬したが、カルバペネム耐性緑膿菌による肺炎を生じた症例を経験した。【臨床経過】64歳男性。20歳で血尿、蛋白尿を指摘、42歳で透析導入され、維持透析中であった。55歳時に献腎移植を受け、免疫抑制剤はメチルプレドニゾロン4mg、タクロリムス1.4mg、ミコフェノール酸モフェチルカプセル500mgを内服していた。近年のクレアチニン値は3mg/dl台と上昇傾向であった。今回、意識障害と胸痛が出現し救急搬送された。造影CTにて上行大動脈から胸腹部移行部に及ぶStanfordA型大動脈解離を認め、同日緊急で大動脈弓部置換術とオープンステントグラフト内挿術を施行した。なお、解離は移植腎グラフトに及んでいなかった。術後、乏尿と高カリウム血症を認め、持続的血液濾過透析を開始した。腎拒絶反応防止のためには周術期にも免疫抑制剤を継続する必要があったが、致死的な感染症の併発や創傷治癒遅延を生じる懸念があること、術前の移植腎機能が悪化傾向であったことを考慮し、移植腎機能廃絶はやむを得ないと判断した。免疫抑制剤の内服はせず、相対的副腎不全予防のためステロイド投与のみ行う方針とした。術後2日目、CRP23.4mg/dl、PCT28.5ng/mlと炎症反応高値となり、メロペメムの投与とPMMA膜による持続的血液濾過透析の併用で炎症は収束した。しかし術後11日目に再度炎症反応が再燃し、バンコマイシン、ミカファンギンも追加したが効果に乏しく、喀痰よりカルバペネム耐性緑膿菌が検出された。アミカシンに変更したが感染コントロールがつかず末梢循環不全が進行し、大動脈解離の発症から18日後に死亡した。【結論】腎移植後患者に外科的疾患が発症した場合は、その治療のみならず、移植腎温存、感染症予防などの周術期管理が必要となる。免疫抑制剤の投与と感染症予防とは相反する効果を得たいジレンマがあるが、致命的となりうる感染症に重きにおいた治療を行った。