第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

消化管・肝・腎

[P40] 一般演題・ポスター40
消化管・肝・腎03

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場20 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:金本 匡史(群馬大学医学部附属病院 集中治療部)

[P40-5] バラシクロビル内服後に急性腎障害およびアシクロビル脳症を発症し血液透析を要した一症例

盛 直博1,3, 和田 幸寛2, 森 麻衣子3, 宮下 亮一3, 大嶽 浩司3, 小谷 透3 (1.昭和大学江東豊洲病院 麻酔科, 2.昭和大学 医学部 内科学講座 腎臓内科学部門, 3.昭和大学 医学部 麻酔科学講座)

【はじめに】バラシクロビルは帯状疱疹などウイルス感染症に効果的な治療薬であるが、まれに内服後に脳症を発症する。今回病前の腎機能が良好でありながらバラシクロビル内服後に急性腎不全およびアシクロビル脳症を発症した症例を経験したので報告する。【臨床経過】介護施設入所の80歳代男性、身長165cm、体重67.7kg。10日前より発症の口唇の水疱が左顔面へと伸展を認めたため1週間前に当院を受診、帯状疱疹と診断されバラシクロビル2000mgを処方された。この際BUN 15.0 mg/dl, Cre 0.72 mg/dl, eGFR 77.1 ml/min/1.73m2と腎機能障害は認めなかった。その後も症状改善なく往診医により4日前からバラシクロビル3000mgに増量され、同時に鎮痛目的でロキソプロフェンナトリウム、アセトアミノフェンの内服が開始された。1日前に往診医により意識混濁と乏尿(350 ml/day)を確認されたため当院紹介となった。来院時JCS3-100の意識障害とBUN 60.1 mg/dl, Cre 7.24 mg/dl, eGFR 6.2 ml/min/1.73m2の腎機能障害を認め高カリウム血症、代謝性アシドーシスも存在したため、血液透析目的で集中治療室に入室した。アシクロビル脳症を疑い2日間血液透析を行ったところ、意識レベル、腎機能ともに改善したため血液透析を離脱し、第4病日に集中治療室から退室した。【考察】アシクロビル脳症はアシクロビルやそのプロドラッグであるバラシクロビルにより引き起こされる精神神経症状であり、アシクロビルや代謝産物の血中濃度上昇が発症に関与する。特に消化管吸収能の改善されたバラシクロビルでは、投与後の血中濃度がより上昇しやすい。アシクロビル脳症は腎機能障害患者に多く報告されているが、本症例では病前の腎機能は正常であった。薬剤自体による腎障害が原因で血中濃度が中毒域に達し脳症を発症したと考えられるが、鎮痛目的で処方されたNSAIDs・アセトアミノフェンや高尿酸血症に対して常用していたアロプリノールは腎機能障害を生じうるため、これらの薬剤が脳症の発症を助長した可能性がある。高齢者では投与前の腎機能が正常であってもアシクロビル脳症を発症する危険があるため、投与の際には十分な注意を払う必要があると考えられる。