第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

消化管・肝・腎

[P40] 一般演題・ポスター40
消化管・肝・腎03

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場20 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:金本 匡史(群馬大学医学部附属病院 集中治療部)

[P40-6] アンモニア測定が診断の一助となった非肝硬変性の門脈大循環短絡性脳症

小林 駿介, 明神 寛暢, 土手 尚, 渥美 生弘, 田中 茂 (聖隷浜松病院 救急科)

【背景】ICUで遭遇する可能性のある意識障害の鑑別疾患として肝性脳症が挙げられる。肝機能障害が背景にあることが大半だが、肝機能障害を伴わずに門脈大循環シャントにより高アンモニア血症を呈し発症するケースも稀だが存在する。今回偶発的にシャントの存在と高アンモニア血症が判明し門脈大循環短絡性脳症(portal systemic shunt encephalopathy)の診断に至った症例を経験したので報告する。【臨床経過】末期腎不全で1年前に維持透析導入された82歳男性。肝疾患歴なし、腹部手術歴なし、飲酒歴はビール900mL/日(1年前に断酒)、外傷歴なし。最終透析は2日前だった。半日程度の経過で意識障害が出現、悪化し救急搬送となった。来院時、GCS(E4V3M4)、血圧142/95mmHg、心拍数83回/分 整、呼吸数11回/分、SpO2 98%(room air)、体温 36.5℃。瞳孔右2mm、左3mm、対光反射両側迅速だが追視なし。四肢自動運動あり。血液検査では肝酵素は正常、肝炎ウイルス検査も陰性で、腎機能障害(BUN 64mg/dL, Cr 10.13mg/dL)以外に特記すべき異常は認めなかった。 頭部CTでは特記すべき異常なくMRIで散在性の新規多発脳梗塞を認めた。しかし梗塞巣は意識障害の原因としては積極的には考えにくく、緊急透析と原因精査目的にICUへ入室した。透析後も意識レベルの改善は得られず、非痙攣性てんかん重積の精査目的に実施した脳波で三相波を認め、何らかの代謝性脳症が疑われた。追加採血で血中アンモニア167μg/dLと高値を認めた。第2病日に下血を来たし腹部骨盤部造影CTを施行、多発結腸憩室と脾静脈から左腎静脈へと蛇行しながら繋がる発達した脾腎シャントを認めた。また採血で血中アンモニア301μg/dLと上昇を認めた。同日に全身性間代性けいれんが出現、投薬により頓挫したが数時間後に突如心肺停止、DNARであったため死亡確認となった。門脈圧亢進を来すような高度の肝障害を伴わず、画像上発達した脾腎シャント、および高アンモニア血症を認めていたことから門脈大循環短絡性脳症が意識障害の原因病態であったと考えられた。【結論】意識障害、意識変容を呈した患者で肝機能障害がない場合でも、門脈大循環短絡性脳症の可能性を考慮し血中アンモニア濃度を測定することが診断の一助となるかもしれない。