第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

多臓器関連

[P41] 一般演題・ポスター41
多臓器関連

2019年3月1日(金) 14:00 〜 15:00 ポスター会場21 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:松本 美志也(山口大学医学部附属病院集中治療部)

[P41-4] 門脈体循環シャントにStreptococcus bovis菌血症を合併し高度の意識障害をきたした一例

花澤 碧, 園生 智弘, 島田 敦, 本木 麻衣子, 中村 仁美, 奈良場 啓, 神田 直樹, 高橋 雄治, 橋本 英樹, 中村 謙介 (日立総合病院救命救急センター 救急集中治療科)

【背景】門脈体循環シャントは高アンモニア血症の原因として稀な疾患である。今回門脈体循環シャントによる高アンモニア血症にStreptococcus bovis菌血症を合併し、高度の意識障害をきたした症例を経験したので報告する。【症例】5年前より門脈体循環シャントを指摘されていた維持透析中の84歳女性。最終健常は11時間前、X日意識障害で搬送。来院時GCS E1V3M4,39.2 ℃の発熱があるものの髄液細胞数は<1,炎症マーカーは微増(WBC 8800 /μl、 CRP 0.31 mg/dl)、qSOFA1点で敗血症を積極的に疑わず。CT上感染源となるような明らかな所見はないが、尿所見WBC 100- /HPF、細菌3+と尿路感染症は否定できずPIPC/TAZを開始。またNH3 498 μg/dlと高アンモニア血症を認めた。X+1日よりCHDF導入、高アンモニア血症に対してラクツロースの投与を開始。X+3日に血培2/2セットでα-Streptococcusを検出し、抗菌薬をCTXに変更、X+4日にStreptococcus bovisと同定された。X+5日に透析針刺入部の発赤・腫脹からHD関連血流感染も疑われVCM追加。入院以降E3VTM5程度の意識障害と瞳孔不同が遷延していたが、X+8日にアンモニア血中濃度の改善とともにGCS E4VTM6に回復した。X+13日の造影CTで腎周囲静脈-脾静脈のシャントが同定された。意識障害の原因として、脱水による著しい腎機能低下から循環不全となり門脈体循環脳症をきたしたと考えられた。X+14日、突然の下血とHb6.5 g/dlと貧血の進行がありCF施行したところ広範な直腸潰瘍を認めた。拍動性出血があるものの腸管壁は脆弱で出血コントロール不良となり出血性ショックのため死亡した。【考察】門脈体静脈シャントは高アンモニア血症による意識障害の鑑別として考慮すべき疾患のひとつである。高アンモニア血症による意識障害の原因として主要な疾患を除外した上で神経学的所見や脳波検査により総合的に判断し,造影CTでシャントの存在を同定することが最も確実な診断法となる。透析患者では除水による大静脈系の相対的陰圧に伴い門脈大循環シャントを発達させ本疾患の増悪のリスク因子となり得るため、本症例でも早期に疑い最終的な診断に至った.また腸管由来細菌の一つであるStreptococcus bovis菌血症を合併しており、門脈体循環シャントを介した敗血症の可能性も考えられた。さらに腸ウレアーゼ産生菌であればアンモニア産生を促進し、高度の意識障害を惹起する可能性も考え得るため文献を交えて考察する。