[P45-6] 多職種が連携して治療を継続することが良好な予後に繋がったと考えられる圧挫症候群の一例
【背景】圧挫症候群は,骨・筋膜・骨間膜に囲まれた隔室の内圧が血腫形成や筋腫脹などの血行障害で上昇し,局所の筋・神経の末梢循環が障害される病態であり,早期に適切な処置が行われないと神経麻痺や筋壊死など重篤な四肢機能障害を生じる.西日本豪雨災害において瓦礫の下敷きとなり圧挫症候群を発症したが,救出現場でのDMATによる医療投入,また病院搬送後に早期から多職種連携を行ったことで四肢温存に繋がった症例を経験したので報告する.【臨床経過】68歳,男性,既往:糖尿病・心疾患.豪雨災害当日に,土石流により家屋が倒壊し頸部から下が瓦礫に挟まれた状態で発見された.救出までに時間が必要であると判断され,消防によりDMAT要請がなされ当院DMATが出動した.現場の状況から救出まで長時間に渡ると予想されたためDMATにより,輸液が開始された.土砂災害発生から,約17時間後に瓦礫の下から救出され長時間の四肢の圧迫により圧挫症候群が疑われた.当院搬送後,整形外科医にて診察され尺骨神経麻痺肢位,また自動運動困難で両前腕が全体的に緊満しており,緊急で減張切開を行い両前腕の圧解除を行った.術後は整形外科医を中心に両上肢の処置を行い血流や創部の壊死・感染を評価した結果,両前腕の切断は回避できた.急性期の横紋筋融解症による腎不全や感染コントロールをはじめとした全身管理は救急科が行い,創部の処置時には多職種で治療方針等の検討を行った.急性期以降の創傷管理は形成外科が中心となり,左前腕の皮膚欠損部については第61病日目にデブリードマン・植皮術を行い生着も良好であった.診療看護師としては,各診療科の医師と連携し創部の管理を中心に一般病床転出後も介入を継続した.リハビリテーション科も創部の観察を行い,協同する中で残存機能の維持やADL拡大に向けた装具の調整などを行った.整形外科と形成外科で数回の手術が必要となったが,多くの診療部門が連携し創部や全身状態を評価し治療方針を決定したことで,約3ヶ月後には軽介助での車椅子移動,見守り下での自力歩行が可能となった.【結語】救出現場でのDMATによる医療投入により早期に治療が開始となり,搬送後も多職種連携を密に行ったことが良好な予後に繋がったと考えられる.