[P49-5] 残された時間を自宅で過ごしたいと希望された患者家族へ退院支援を行った症例
1.背景ICUでは生命維持、改善に向けた治療、看護と同時に退院に向けた支援が開始されるが実際の退院調整が行われる事はほとんどない。今回、患者=生活者として早期より患者家族理解、意志決定支援に努め患者家族と医療者が自宅退院という同じ目標に向かい進む事ができた事例について報告する。2.臨床経過80代、男性。多発性骨髄腫。化学療法開始後、患者は誤嚥性肺炎、CO2ナルコーシスでICU入室となった。入室後、挿管管理は長期化し気管切開も日程調整段階であったがSBT(自発呼吸トライアル)に成功し抜管後に一般病棟へ転出した。しかし3日後CO2ナルコーシスでICU再入室となった。その際、医師は家族に対して「現病の治療はもちろん、全身状態の改善は厳しい。積極的に治療を継続するか緩和医療に移行するか選択が必要」との説明を行った。再入室後の患者は挿管管理ではなくNPPV(非侵襲的陽圧換気療法)による呼吸管理を継続していたがJCS3-20程度と自身で今後の治療方針について決定することは困難な状況であった。そのため今後の方針について家族は代理決定を求められた。患者はICU再入室前、家族に対して「自宅に帰りたい」などと言われていたようだが、家族は「少しでも長く生きてほしい、でもしんどい事はかわいそう」などの想いがあり選択に迷われている状況であった。そのため看護師は「どちらを選んでも間違いではない」と伝えた上で家族の思いの傾聴、家族が意志決定を行う上で必要な事についての助言を行うなどの援助を行った。また家族から得た情報は医師にもフィードバックし、必要時はIC(インフォームドコンセント)、面談の調整も行った。そして最終的に家族は患者の思いを尊重し自宅退院を希望された。在宅医療へ方針転換後、意識レベルは改善傾向で癌性疼痛もない状況であった。骨髄腫の治療は中断しており残された時間は短く在宅医療を目指すには今しかない状態でもあった。そのため、ICUから自宅へ直接退院を目指し家族へのNPPV管理方法、経管栄養、口鼻吸引などの技術指導、関係各所との連携を行った上で最終的に患者家族の意向に沿った自宅退院を実現する事ができた。3.結論今回ICUから直接自宅退院となったが、意思決定支援を十分行い患者の意向に添った形で家族と協力して退院支援を行う事が出来た。