[P5-1] 敗血症症例の初期IgG値と退院時転帰の関連についての検討
[背景]敗血症における免疫グロブリンと予後に関する報告があるものの, 未だ本邦で免疫グロブリン値の予後への影響に関する検討はほとんど行われていない. [目的]敗血症症例の初期IgG値と院内死亡率の関連について検討することが本研究の目的である. [方法]2017年4月1日から2018年7月31日までに当院総合集中治療部(ICU)に入室した敗血症症例を対象とした. 入室日にIgGを測定し, 測定時に免疫グロブリン製剤投与が行われていない症例を対象とした. 入室時のIgG値を抽出し, 主要評価項目は退院時転帰とし, 副評価項目はSOFAスコア, 白血球数, CRPとした. IgG正常下限以下(IgG < 870mg/dL)の低IgG群 (L群) とそれ以上の値をとる正常IgG, 高IgG値をとる群 (NH群) の2群に分類に分類した. 2群間の比較はt検定, χ二乗検定を行い, 退院時転帰についてはCOX比例ハザードモデルを用いてハザード比を算出した. [結論]対象症例は111例であり, L群54例, NH群57例であった. L群とNH群におけるSOFAスコアは7.7±3.8と7.2±4.4 (p=0.51), 白血球数は13.1±19.0(×103/μl)と14.7±10.0(×103/μl) (p=0.56), CRPは21.1±22.5mg/dlと12.0±8.7 mg/dl (p<0.01) とCRP以外は2群間の比較において統計学的な有意差はみられなかった. 院内死亡率はL群22.2%. NH群26.3% (p=0.66)で有意差は認めず, L群のNH群に対する退院時転帰のハザード比は0.96 (95%信頼区間:0.44-2.13) (p=0.93) であった. [結語]IgG低値は退院時転帰に関連するという結果は得られなかった ただし, 本研究症例は免疫グロブリン製剤が測定後に投与されており低IgG症例の予後に影響した可能性は否定できなかった. このため, 今後の更に検討を続けていく必要がある.