[P5-2] 院内MRSA感染113症例の予後因子に関する後ろ向き検討
【背景】院内発生の多剤耐性菌出現に対して集中治療従事者は常に慎重な感染管理が求められる。今回、当院MRSA感染症例を後ろ向きに検討することで予後因子の検討を行いたい。【目的】当院のMRSA感染症患者の予後因子に抗菌薬の多剤投与がある、という仮説を立てる。【方法】院内倫理委員会承認後、後ろ向き観察研究にて当院2016年11月1日から2018年7月31日までの過去1年9か月間にHCUに入院し、入院後の細菌培養検査でMRSAが陽性であった症例を対象とした。主要評価アウトカムを「死亡」とした。【結果】全113症例(平均年齢77.7±14.6歳、男性67例[59.3%]女性46例[40.7%])中、入院中死亡は26例(23.0%)であった。敗血症と診断され治療を受けたのは19例(16.8%)、敗血症無しは94例(83.2%)であった。敗血症有/無で年齢(81.3±9.0歳/77.0±15.4歳、p=0.25)と性別(男性)(12例63.1%/55例58.5%、p=0.70)に差は認めなかった。敗血症有無別に年齢性別調整後、死亡をアウトカムとしたロジスティック分析では、敗血症でなかった群(94症例)において挿管(NPPVを含む)期間(OR=0.26、95%CI=0.03-0.81、p=0.001)、使用抗菌薬数(1.50、1.06-2.17、0.02)、MRSA検出部位数(2.78、1.21-6.59、0.01)で有意となった。一方で敗血症群(19症例)ではいずれの項目もあきらかな有意差は出なかった。【結論】MRSA陽性HCU入室患者中、死亡率が23%と高率であった。敗血症症例の有意な予後因子は確認できなかったが、挿管期間、使用抗菌薬数、MRSA検出部位数が多い症例では予後不良となる危険性が示唆された。