[P5-5] 当施設ICUにおける緑膿菌のアンチバイオグラムとローカルファクター
【背景】ICU患者の約半数は何らかの感染症を併発しており,ときに敗血症へと至る.敗血症治療の重要な要素の一つが,感受性のある抗菌薬の速やかな投与である.より確実な抗菌薬使用を目的に広域抗菌薬が投与される一方,不適切な抗菌薬使用は耐性菌発生を助長しうる.特に,緑膿菌は5つの耐性機構を有しており,その感受性は施設ごとで大きく異なるため,自施設の感受性パターンの把握は重要である.【目的】本研究の目的は,当施設ICUにおける緑膿菌のアンチバイオグラムを作成し,ローカルファクターを明確にすることである.【方法】2014年1月から2016年12月までの期間に院内で検出された菌株を対象とし,後方視的にデータを抽出した.同一患者から複数回,同一菌種が検出された場合は初回株のみを対象とし,感受性の不明な真菌は対象から除外した.各菌株の最少発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration; MIC)からアンチバイオグラムを作成した.アンチバイオグラムはClinical and Laboratory Standards Institute の薬剤感受性に基づき耐性,中等度耐性,感受性とした.当施設ICUでの感受性パターンと,本邦で代表的な院内感染対策サーベイランス(Japan Nosocomial Infections Surveillance; JANIS)の報告との比較を行った.【結果】ICUで検出された全351株のうち,菌分離率は緑膿菌が20%(69株)で最多であった.アンチバイオグラムの結果では,ciprofloxacin (CPFX)が98.6%と最も良好な感受性を示し,次いでにamikacin (AMK) 97.1%,meropenem (MEPM),cefepime (CFPM),ceftazidime (CAZ) 92.8%,tazobactam/piperacillin (TAZ/PIPC) 87.0%であった.すべての薬剤においてJANISの緑膿菌感受性結果(levofloxacin 81.6%,AMK 96.1%,MEPM 80.3%,CFPM 84.4%,CAZ 85.9%)より良好な値を示していた.この結果から,当院ICUでは特定の抗菌薬における緑膿菌の耐性化は認めらなかった.多剤併用療法を考慮した場合は,ßラクタム系とfluoroquinoloneの併用で治療成功率は98.6%であった.【結論】当施設ICUにおける緑膿菌の感受性はいずれの薬剤も良好な感受性を維持しており耐性化は認めなかった.併用療法を考慮する場合は,ßラクタム系とfluoroquinoloneの併用が最も有効だと考えられた.