第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

感染・敗血症 研究

[P5] 一般演題・ポスター5
感染・敗血症 研究01

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場5 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:山下 千鶴(藤田医科大学医学部 麻酔・侵襲制御医学講座)

[P5-4] 劇症型溶血性レンサ球菌感染症モデルマウスにおける突然変異の解析

尾辻 健 (産業医科大学病院 集中治療部)

【目的】A群β溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes: GAS)は、ときに劇症型溶血性レンサ球菌感染症streptococcal toxic shock syndrome (STSS)を引き起こす。病原因子発現の調節に中心的な役割を果たすcovR /S遺伝子およびropB遺伝子の突然変異が、STSSを発症させると考えられているが、その詳細は十分解明されていない。本研究では本菌の劇症化に至るメカニズムを解明するために、STSSのモデルマウス(Saitoら2001年)の血液および臓器からGASを分離し、covR /S遺伝子およびropB遺伝子の配列を解析した。 【方法】STSSのヒト由来臨床分離株107CFUをddYマウス20匹の右上腕に筋注した。瀕死状態に至ったマウスより脾臓、血液、右上腕筋を回収し一晩培養した。得られたGASのコロニーからDNA抽出を行い、covR /S遺伝子およびropB遺伝子の塩基配列を確認した。【結果と考察】マウス20匹中15匹は、GASを筋肉内注射後20日~60日の間にSTSS様の症状を呈し死亡した。血液及び脾臓分離株は、covR /S遺伝子に変異を生じており、各マウスにおける変異は同一であった。なお、ropB遺伝子の変異は全てのマウスで認められなかった。しかし、右上腕筋においては、血液及び脾臓分離株と同じ変異を有する株、別の変異を有する株、および変異を生じていない株が混在していた。そのcovR /S遺伝子変異株をあらたにddYマウスに筋注したところ、未変異株を筋注した場合より短期間でマウスが死に至る傾向がみられた。これらの結果により、STSSモデルマウスの感染部位においてcovR /S遺伝子に様々な変異を獲得した菌が出現し、そのうちの一部の強毒化した菌が全身に播種することでSTSSを発症し、宿主を死に至らしめる一連の流れが示唆された。