第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

補助循環

[P51] 一般演題・ポスター51
補助循環01

Sat. Mar 2, 2019 11:00 AM - 12:00 PM ポスター会場10 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:小倉 崇以(前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科)

[P51-5] 【優秀演題(ポスター発表)】人工心肺離脱時の重症右心不全に対して右心補助人工心臓(RVAD)の導入が有効であった一例

松下 裕貴, 大宮 浩揮, 上原 健司, 藤中 和三, 鷹取 誠 (広島市立広島市民病院 麻酔科)

【背景】心臓血管外科手術では長時間の手術や不十分な心保護液投与、人工心肺の影響など様々な要因により重症両心不全を呈することがある。人工心肺離脱時にカテコラミン治療にも反応しない両心不全に対して大動脈内バルーンパンピング(IABP)や経皮的心肺補助装置(PCPS)を用いることがあるが、特に右心不全が顕著であった両心不全に対して IABP装着後にRVADの導入が有効であった症例を経験したため報告する。【症例】69歳男性、糖尿病腎症による維持透析患者。不安定狭心症に対して数回の経皮的冠動脈形成術の既往あり。X年8月に胸部絞扼感が出現し、精査の結果、重症大動脈弁狭窄症および虚血性心疾患と診断された。X年12月に大動脈弁置換術および冠動脈バイパス術を施行した。人工心肺(CPB)確立後は低体温循環停止法を行った。CPB離脱時に心室細動となり電気的除細動を施行し洞調律を得た。低心拍出量が遷延し、経食道心エコー(TEE)にて両心収縮の低下を認めたためカテコラミン投与やIABP挿入、さらに冠動脈グラフトの再吻合を行ったが反応に乏しかった。低心拍出量、中心静脈圧の上昇を認めたが肺動脈楔入圧は基準範囲内でありTEEにて著明な右心収縮低下を認めたため、右心不全が疑われた。RVAD装着および一酸化窒素(NO)の投与を行ったところ、心拍出量および血圧上昇が得られCPBを離脱できた。開胸のまま手術終了し、挿管鎮静下に集中治療室に入室となった。入室後より持続血液濾過透析(CHD)を開始し、水分管理を行った。術後1日目にドレーンから血性排液が持続し、緊急血種除去術施行した。術後2日目に再度、緊急血種除去術を施行したが、右心収縮の改善を認めたためRVADを離脱した。徐々に左心収縮改善も得られ、術後5日目に閉胸行いIABPを離脱した。【考察】本症例では人工心肺離脱時の両心不全に対してカテコラミン投与およびIABP挿入後に著明な右心不全が残存した。重症の両心不全ではPCPSの導入を検討することがあるが、PCPS導入後は左心後負荷の上昇により肺うっ血をきたす恐れがある。本症例では左心不全は機械的サポートを必要とする程度ではないと判断し、右心不全に対してRVADを導入することで、生理的循環が保たれ、術後に肺うっ血をきたすことなく管理することができた。【結語】人工心肺離脱時の重症右心不全に対してはPCPSを回避しRVADを導入することを考慮する。