[P52-5] ECMOにおける回路交換の目安
【はじめに】 ECMO(Extracorporeal Membrane Oxygenation)施行時にはさまざまなリスクがあり,合併症が多い.当院では、長期施行における血栓形成や溶血のため,一患者数回の回路交換を行う症例がみられる.これまで当院では溶血,凝固線溶の指標としてLDH,Dダイマーを回路交換の目安として観察を行っていたが,近年,凝固線溶マーカーであるSFMC(Soluble Fibrin Monomer Complex)が血栓形成において鋭敏な血中濃度の変化がみられるとする報告が多くあり,今回新たに観察項目に加えたので経過を報告する.【目的】 SFMCが的確な回路交換のタイミングの目安となるのか比較検討することを目的とした.【方法】 ECMO施行中に回路交換を実施した患者のSFMC値とLDH値を後ろ向きに調査し,回路交換の前後で比較した.【結果】 ECMO導入初日に454μg/mlだったSFMCが3日目で2838μg/mlと急上昇しピーク値になり,5日目には尿量が減少し褐色尿となった.LDHは425U/Iであった初日から5日目(573U/I)にかけて緩やかに上昇し、5日目から回路交換の決定となる7日目(4571U/I)にかけ急上昇していた.回路交換後の遠心ポンプ裏の軸には,25mm大の血栓が形成されていた.回路交換翌日にはSFMCは3.5μg/mlに,LDHは1201U/Iとなり、緩やかに減少していった.【考察】 SFMCは凝固活性化の早期にあらわれ,その血中濃度はトロンビンの生成を反映することから,血栓症のより鋭敏な指標とされている.SFMCが急上昇しピーク値となった導入3日目には,血栓が形成されていたと考えられた.5日目にみられたLDHの上昇や褐色尿は,3日目に出来上がった血栓によって溶血が引き起こされたと考えられた.形成された血栓により溶血が起こる前のSFMCが急上昇した3日目が,回路交換のタイミングであったと考えられた.【結語】 溶血の指標であり,血栓を溶かさずに分泌されるLDHより、SFMCは血栓形成に鋭敏に反応し、回路交換のタイミングの目安となると考えられた.