[P52-6] 補助循環に起因した下肢血流障害を生じ下肢切断を要した一例
【背景】体外式膜型人工肺(Extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)や大動脈内バルーンパンピング (Intra aortic balloon pump : IABP) を挿入する際、下肢末梢の阻血により血流障害を発症することがある。下肢虚血の評価方法には、皮膚温、色調、Doppler聴診器による末梢動脈の聴取、血中筋原性酵素の測定などがある。最近では下肢に局所酸素飽和度 (regional SO2 : rSO2)を用いた管理の報告も散見される。今回、rSO2を測定することで下肢血流障害の評価を行ったので報告する。【症例】56歳男性、左回旋枝#13の急性心筋梗塞に対し経皮的冠動脈形成術を施行。入院中のCT検査で、両側の下肢閉塞性動脈硬化症と診断、翌月に末梢血管内治療を予定し退院となった。退院翌日、歩行中に呼吸苦出現し、救急隊到着直前に心肺停止となった。心肺蘇生後、自己心拍再開となり前医救急搬送された。急性冠症候群の関与は疑われず、精査加療目的に当院搬送された。冠動脈精査前に致死性不整脈が出現し、電気的除細動を行うも復帰せず、右大腿静脈に20Fr静脈脱血カニューレ、右大腿動脈に16Fr動脈送血カニューレを挿入後、venoarterial-extracorporeal membrane oxygenation(VA-ECMO)導入となった。冠動脈精査実施、冠攣縮性狭心症が疑われた。左大腿動脈にIABP挿入し、ICUに入室した。入院翌日の採血でCK374U/L、CK-MB26IU/Lと上昇を認め、右足先の色調変化と左下腿の腫脹がみられた。早期に血流障害を判断するためにINVOS 5100C (Medtronic社) を左右下腿に装着し、rSO2を測定した。右下腿のrSO2が73に対し左下腿のrSO2が17と左右差がみられたため、IABP挿入による下肢血流障害と判断しIABPを抜去した。IABP抜去後、左下腿のrSO2増加を認めた。再灌流後にCKはMax 42980U/L、CK-MB 660IU/Lまで上昇を認め、左下腿のコンパートメント症候群を合併した。第3病日にVA-ECMO抜去、左下腿の腫脹に伴い減張切開術と陰圧閉鎖療法を施行となった。洗浄デブリードマンを行うも第14病日、左下腿切断となった。第41病日、冠攣縮に起因する致死性不整脈に対する植込み型除細動器を留置。第68病日に退院となった。【結論】補助循環導入後、下肢の血流評価にrSO2を用いて評価することで、下肢の血流障害の早期発見に有効であった。本症例では下肢の切断となったが、導入時にrSO2を経時的に測定することで、下肢の血流障害を早期発見することが可能であると考えられる。