第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

補助循環

[P52] 一般演題・ポスター52
補助循環02

2019年3月2日(土) 11:00 〜 11:50 ポスター会場11 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:中嶋 辰徳(大分大学医学部附属病院 ME機器センター)

[P52-6] 補助循環に起因した下肢血流障害を生じ下肢切断を要した一例

柴田 康成1, 加納 寛也1,2, 大塚 健太1, 石井 彩織1, 近藤 慶1, 守田 佳保里1, 横田 真理子1, 森島 毅1, 納庄 弘基3, 多田羅 康章3 (1.社会医療法人 愛仁会 明石医療センター 臨床工学科, 2.森ノ宮医療大学 保健医療学部 臨床工学科, 3.社会医療法人 愛仁会 明石医療センター 麻酔科)

【背景】体外式膜型人工肺(Extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)や大動脈内バルーンパンピング (Intra aortic balloon pump : IABP) を挿入する際、下肢末梢の阻血により血流障害を発症することがある。下肢虚血の評価方法には、皮膚温、色調、Doppler聴診器による末梢動脈の聴取、血中筋原性酵素の測定などがある。最近では下肢に局所酸素飽和度 (regional SO2 : rSO2)を用いた管理の報告も散見される。今回、rSO2を測定することで下肢血流障害の評価を行ったので報告する。【症例】56歳男性、左回旋枝#13の急性心筋梗塞に対し経皮的冠動脈形成術を施行。入院中のCT検査で、両側の下肢閉塞性動脈硬化症と診断、翌月に末梢血管内治療を予定し退院となった。退院翌日、歩行中に呼吸苦出現し、救急隊到着直前に心肺停止となった。心肺蘇生後、自己心拍再開となり前医救急搬送された。急性冠症候群の関与は疑われず、精査加療目的に当院搬送された。冠動脈精査前に致死性不整脈が出現し、電気的除細動を行うも復帰せず、右大腿静脈に20Fr静脈脱血カニューレ、右大腿動脈に16Fr動脈送血カニューレを挿入後、venoarterial-extracorporeal membrane oxygenation(VA-ECMO)導入となった。冠動脈精査実施、冠攣縮性狭心症が疑われた。左大腿動脈にIABP挿入し、ICUに入室した。入院翌日の採血でCK374U/L、CK-MB26IU/Lと上昇を認め、右足先の色調変化と左下腿の腫脹がみられた。早期に血流障害を判断するためにINVOS 5100C (Medtronic社) を左右下腿に装着し、rSO2を測定した。右下腿のrSO2が73に対し左下腿のrSO2が17と左右差がみられたため、IABP挿入による下肢血流障害と判断しIABPを抜去した。IABP抜去後、左下腿のrSO2増加を認めた。再灌流後にCKはMax 42980U/L、CK-MB 660IU/Lまで上昇を認め、左下腿のコンパートメント症候群を合併した。第3病日にVA-ECMO抜去、左下腿の腫脹に伴い減張切開術と陰圧閉鎖療法を施行となった。洗浄デブリードマンを行うも第14病日、左下腿切断となった。第41病日、冠攣縮に起因する致死性不整脈に対する植込み型除細動器を留置。第68病日に退院となった。【結論】補助循環導入後、下肢の血流評価にrSO2を用いて評価することで、下肢の血流障害の早期発見に有効であった。本症例では下肢の切断となったが、導入時にrSO2を経時的に測定することで、下肢の血流障害を早期発見することが可能であると考えられる。