第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

鎮痛・鎮静・せん妄 研究

[P55] 一般演題・ポスター55
鎮痛・鎮静・せん妄 研究03

Sat. Mar 2, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場14 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:竹中 千恵(京都府立医科大学附属病院 集中治療部)

[P55-4] 集中治療室入室患者の妄想的記憶や記憶の喪失の関連因子についての検討

山口 貴子, 月岡 悦子, 菊池 美穂, 加藤 由, 岸 泰宏 (日本医科大学武蔵小杉病院)

【背景】近年,長期予後の重要性から集中治療室退室後の集中治療後症候群(Post intensive care syndrome: PICS)が注目されている.なかでも精神障害であるうつ症状や不安,心的外傷後ストレス障害はICU滞在中の恐怖体験・妄想的記憶・記憶の欠如等の歪んだ記憶が関連しているとの報告もあるが未だ不明な点も多く研究の蓄積が求められている.【目的】本研究はICU入室患者歪んだ記憶の関連因子を明らかにすることで,PICS予防の示唆を得ることを目的としている.【用語の定義】記憶の歪みとは,ICU入室中に,不思議な出来事や納得できない出来事があった,あるいはICU入室中の出来事を全くもしくは部分的に想起できない状態を指す.【方法】一施設の大学病院ICUに予定手術で入室した21症例を対象とした.ICU入室前にせん妄や精神疾患を有する症例,Mini Mental State Examination(MMSE)で重度認知機能障害と評価された症例を除外した.ICU退室1週間後に,インタビューガイドを用いて半構成的面接を行い, 患者を歪みあり・なしの2群に分けた.基礎情報(年齢・性別・手術時間・ICU在室時間・挿管時間・術後鎮静時間・APACHE2スコア)ICU入室中のせん妄評価Intensive care Delirium Screening Checklist (ICDSC),ICU入室前のMMSE及びHospital Anxiety and Depression scale (HADS)による不安・抑うつ評価,入院時の身体・心理・社会的脆弱性を評価するcomplexity prediction instrument (COMPRI)スコアから要因を分析した.Hotelling T square検定を用い記憶の歪みあり・なしの両者間に差があることを確認したのち,それぞれの項目について検定をおこなった.【結論】対象者21名のうち,13名が記憶の歪みを認めていた(記憶の欠如n=10,妄想的記憶n=9,記憶の欠如および妄想的記憶n=6).記憶の歪みの発症要因では,長い鎮静時間(p=0.3)と高いCOMPRIスコア(p=0.3)で有意であった.【結語】深鎮静や鎮静薬の長期使用が心的外傷後ストレス障害や妄想的記憶に関与している報告もあり,本研究においても鎮静薬の使用は可能な限り最小限にとどめることが有用な可能性が示唆された.また,COMPRI等の入院時の身体・精神・社会的脆弱性の測定は歪んだ記憶のリスクを特定するツールとして活用できる可能性がある.今後,PICSへの関連も含めより質の高い研究につなげたい.