第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

鎮痛・鎮静・せん妄 研究

[P55] 一般演題・ポスター55
鎮痛・鎮静・せん妄 研究03

Sat. Mar 2, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場14 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:竹中 千恵(京都府立医科大学附属病院 集中治療部)

[P55-5] せん妄予防対策としてのICU面会時間延長の有効性について

石戸谷 也寸志1, 正野 貴則1, 冨里 康太1, 勝連 しのぶ1, 洲鎌 正子1, 久場 良也2 (1.ハートライフ病院 看護部 ICU, 2.ハートライフ病院 麻酔科)

【背景】せん妄はICU滞在時間の延長,死亡率の上昇などの長期予後増悪因子として問題視されている。現在,当院ではせん妄に対してICDSCを用いた評価による薬物の投与を行なっているが,薬物投与や環境調整以外の予防対策は特に行われていない。患者にとって家族の不在は,心理的な不安となり,せん妄の誘発因子の1つとして示唆されている。【目的】ICUの面会時間を延長し,家族の面会回数・時間を増やすことで,せん妄の発生を抑えることに影響するかどうかを検証する。【方法】ICUに入室した全患者を対象とし,従来群(2017年11月~2018年1月)は面会時間を通常の3.5時間/日で行い,延長群(2018年2月~4月)は面会時間を9時間/日へ延長した。せん妄の判定は「ICDSCが4点以上であること」,または「主治医および心療内科医がせん妄と診断した所見があること」とし,ICDSCの評価は看護師が各勤務帯で1回(1日2回)および患者の状態変化時に行った。従来群と延長群に分けてせん妄の発生の有無,家族の面会回数・時間を集計し,多変量解析を用いて面会時間の延長がせん妄の発生率に及ぼす影響を評価した。延長期間終了後に看護師を対象としたアンケートを実施し,せん妄予防対策としての有効性について聴取した。【結果】患者の平均年齢(平均値±標準偏差)と男女比は,従来群は71歳±15歳と75人:45人,延長群は68歳±14歳と58人:50人であった。患者1名あたりの家族の面会回数は従来群が2.9回,延長群が3.3回で113%の増加となり,面会時間は従来群が65分,延長群が78分で120%の増加となった。せん妄の発生率は,従来群が23%(120名中28名),延長群が15%(108名中16名)で7%減少した。多変量解析では,従来群と延長群でせん妄の発生率に有意差は認められなかった(p=0.13)。また,延長期間終了後に実施した看護師のアンケートでは,「面会時間を延長したことがせん妄予防に有効である」と回答したのが12%に対し,「あまり変わらない」が59%,「有効でない」は29%であった。【結論】本研究において,ICUの面会時間延長がせん妄の発生を抑えるという有効性は示されなかった。今回の研究期間は6ヶ月(従来群と延長群で各3ヶ月)と短かったが,延長群ではせん妄の発生率は減少傾向を示した。今後,有効性を明確にするためには,面会時間延長の長期的な実施およびハイリスク患者を選定した検証を行う必要があると考える。