第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

中毒

[P61] 一般演題・ポスター61
中毒01

2019年3月2日(土) 11:00 〜 11:40 ポスター会場20 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:小畑 仁司(公益財団法人大阪府三島救急医療センター)

[P61-3] 酸化マグネシウムの長期投与により意識障害を発症した高マグネシウム血症の1症例

一瀬 麻紀, 長谷川 綾香, 秋葉 春菜, 有野 聡, 佐々木 庸郎, 山口 和将, 小島 直樹, 稲川 博司, 岡田 保誠 (公立昭和病院 救命救急センター)

【背景】酸化マグネシウム(以下MgO)は下剤として古くから頻用されており多くの症例で安全に使用されているが稀に高マグネシウム(以下Mg)血症を生じる事がある。今回われわれは、MgO製剤の長期内服により意識障害、循環不全を認めた高Mg血症の症例を経験したので報告する。【臨床経過】統合失調症の既往がある60才、男性。10年前からMgO 2g/日を内服していた。来院13日前から排便を認めずイレウスとなり、当日昏睡、低血圧を認めたため、当院へ搬送された。来院時、意識E1V1M1、血圧69/40mmHg、脈拍67回/分、呼吸数18回/分、SpO296%(補助換気FiO2 1.0)、心電図は洞調律・QRS幅は174ミリ秒であった。腸蠕動音は低下しており、レントゲンでは多数の腸管ガス像、便塊を認め宿便性イレウスが疑われた。直ちに気管挿管を行い、イレウスによる脱水に対し急速輸液を行ったところ意識はE4VTM6と改善したが循環不全は遷延した。来院時血液検査ではMg 20.2mg/dlと高値であり他の電解質、腎機能異常は認めないため、前述の症状は高Mg血症によるものと診断しグルコン酸カルシウムの持続投与と血液透析を行った。血液透析を1日4時間2日間行い終了時の血清Mg濃度は2.7mg/dlと低下した。第4病日に血清Mg濃度は1.8mg/dlと基準値以下となり、以後血中濃度は再上昇することなく経過した。血清Mg濃度の低下とともに循環不全は改善し、ICU入室時よりノルアドレナリンを使用したが漸減中止し、意識、呼吸も問題がないため第4病日抜管した。第8病日に食事を開始し、ピコスルファートナトリウムで排便コントロールが可能であることを確認し第16病日に精神科病院へ転院となった。【結論】Mgは腸管から吸収され、腎から排泄されるため、MgO製剤の投与量が常用量であってもイレウスにより腸管内停滞時間が長い患者や腎機能障害を認める患者では高Mg血症となる。長期にわたりMgO製剤を内服している患者が意識障害,血圧低下,徐脈,呼吸不全を認めた際は高Mg血症の可能性を考えて対応するべきであると思われる。