[P65-2] 外傷患者における早期リハビリテーションの徹底は離床までの日数を短縮させる
【背景】外傷集中治療の目的は,組織の酸素化を改善し,低体温やアシドーシス,凝固障害の積極的補正,感染と臓器虚血を予防することである.また,多発外傷となるとその部位の安定を図るために安静臥床を強いられることとなる.近年,ICUからの早期リハビリテーションの重要性が認識されはじめ,多職種によるチームでのリハビリテーション介入が加算対象となっている.早期リハビリテーションの主要要素は早期離床(Early Mobilization:EM)であり,安全なEMがICUおよび在院日数の減少やADLの改善に寄与することが示されるなど,患者が速やかに良好な経過を得ることが様々な報告によって裏付けされている.しかし,そのベースとなっている疾患対象は周術期や敗血症を中心としたものであり,外傷や熱傷などのEMについて述べられているものは非常に少ない.当院はドクターヘリを有する3次救急の地域拠点病院であり,その中に救急診療科患者も入院され,高エネルギー外傷後の症例も多く含まれる.当院において,2018年度より救急診療科にて入院された患者に対しICUからの早期リハビリテーション介入の徹底を行っている.その方法としては,ICU入室後48時間以内のリハビリ介入依頼の検討と,理学療法士と看護師とで行われる朝のミニカンファレンスによるプログラムの検討である.【目的】本研究の目的は,外傷患者における早期リハビリテーションの徹底が,離床までの期間を短縮するか,またその安全性を検証することである.【設計】本研究は後ろ向きコホート研究である.【方法】当院救急診療科にてICUに入室した外傷患者(死亡例を除く)のうち,2017年10月から2018年3月までの41例を非早期群,2018年4月から7月までの33例を早期群とし,比較検討した.調査項目は,患者背景として,年齢,性別,ISS score.主要アウトカムとして,離床までの期間とした.また,安全性を確認するため,EM中の有害事象を調査した.EMの基準としては集中治療室活動度スケール(Intensive Care Unit Mobility Scale:IMS)3以上とした.【結果】2群間において患者背景に有意差は認めなかった.非早期群と比較し,早期群において離床までの期間が有意に短縮した(10.2±9.0日VS 6.6±6.0日p<0.05 ).EMに関連する有害事象は両群とも認めなかった.【結論】外傷患者の早期リハビリテーションの徹底は,離床を安全かつ早期に実施可能にすることができる.