第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

リハビリテーション 症例

[P68] 一般演題・ポスター68
リハビリテーション 症例02

2019年3月2日(土) 14:00 〜 14:40 ポスター会場6 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:松木 良介(関西電力病院 リハビリテーション部)

[P68-2] 可逆性弛緩性四肢麻痺を合併した甲状腺クリーゼの1例

井藤 公紀, 小林 隆行, 横谷 浩士, 内村 信一郎 (総合病院 国保旭中央病院 リハビリテーション科)

【背景】甲状腺クリーゼは甲状腺中毒症の0.22%に起こる極めて稀な疾患である。その発症機序は不明であり、何らかの誘因により急速に状態が悪化し、致死的となり得る疾患である。一方で、ICU-AWの予防及び治療には早期リハビリテーションが有用とされている。今回、甲状腺クリーゼの回復過程にて鎮静管理後にICU-AWが原因と思われる四肢麻痺を呈したことで、著しいADL能力低下を認めた症例を経験したため報告する。【目的】本症例の急性期にてリハビリ職種がどう有益に関わることができたのかを検討することで、今後の類似症例介入時の教訓とする。【臨床経過】症例は既往歴のない40代女性。突然発症の左下腹部の疼痛を認め、十二指腸潰瘍穿孔・急性汎発性腹膜炎、バセドウ病(未指摘及び未治療)を基礎疾患とした甲状腺クリーゼと診断された。緊急で大網充填・被覆術を施行され、挿管管理の上でICUへ入院となった。甲状腺治療には薬剤療法(ヨウ化カリウム、チアマゾール、ヒドロコルチゾン)を開始した。1病日よりリハビリは介入したものの、循環動態が不安定であり床上での関節可動域訓練(ROM)より開始した。従命及び四肢自動運動は可能であった。術後の経過で多臓器不全、DIC、横紋筋融解症を合併した。また、充填不全を認め、保存加療となった。10病日に無鎮静で覚醒レベル低下(GCS:E1VTM1)を認めた。15病日に覚醒が向上(GCS:E4VTM1)したが、MRC-scoreは合計0点、開閉眼・極軽微な頷きができる程度で四肢の随意運動は困難であった。22病日より全身状態が落ち着いたため離床を開始し、端座位や立位保持練習を開始した。59病日に呼吸器を離脱した。徐々に筋力向上を認め、143病日にMRC-scoreは合計39点まで改善した。【結論】甲状腺クリーゼ発症後に可逆性四肢麻痺を認めた同様の症例が複数報告されており、甲状腺クリーゼはその病態からICU-AWを合併しやすい可能性があり、早期からリハビリを開始する必要がある。離床が困難な期間には神経筋電気刺激(neuromuscular electrical stimulation:NMES)が骨格筋筋萎縮の予防・改善に有効である可能性があるが、現状にてその有用性は確立されていない。今後、更なる質の高い研究が必要である。