[P68-5] 精神遅滞患者の開心術周術期理学療法経験~J-PADガイドラインに準じた介入が有効だった一症例~
【背景】心臓血管外科領域を始めとする周術期理学療法では、十分に安全を確保した上で各種ドレーンやルート類が留置された状態から早期離床を開始することの有用性が多く示されている。また、集中治療室における成人重症患者に対する早期離床には、J-PADガイドラインに準じた管理が推奨されている。しかし、精神遅滞を有する患者に対して同様に扱うことが可能かどうかは不明である。今回、精神遅滞による知的障害および統合失調症様症状を有する患者に対する開心術周術期の理学療法を担当し、J-PADガイドラインに準じて早期離床介入した経験を得たので報告する。【臨床経過】30歳代、女性。診断名は僧帽弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症。既往には精神遅滞(知的・言語理解は2-3歳相当)、統合失調様症状を有していたが、簡単な指示理解は可能であった。X日、手術目的に当院心臓血管外科入院、同日より術前理学療法開始した。X+3日、僧帽弁形成術および三尖弁形成術施行されICU管理となり、術翌日より理学療法介入再開した。挿管下人工呼吸およびカテコラミンサポートにて管理されていたが、鎮痛鎮静コントロール良く(CPOT:0-1点、RASS:-2~-1)、精神状態(反応)を確認しながらヘッドアップ座位まで離床を進めた。X+5日、循環動態および鎮痛鎮静も安定していたため端座位まで実施した。X+6日人工呼吸器離脱(抜管)され、介助立位および車椅子乗車した。X+7日、介助歩行開始し、ICU退室となった。X+10日、大声を上げるなど精神症状を認め、精神医療センター転棟した。X+26日、独歩にて前施設へ退院となった。【結論】本症例は術後管理の理解や協力が難しく、ドレーン類の事故抜去等のリスクが高いと判断された。当初、安全面を優先するため、ドレーン類の抜去まで深鎮静による管理も検討されていた。医師、看護師とともに、J-PADガイドラインに準じて十分な痛みの管理、鎮静深度の調整を図ることで、安全に離床を進めることができた。また、挿管下で本人の協力を得ながら端座位ができたことから、早期抜管へ方針変更となった。今後は症例を重ね、適切な理学療法やその効果を検証すること必要である。