第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

呼吸 症例

[P70] 一般演題・ポスター70
呼吸 症例05

2019年3月2日(土) 14:00 〜 14:50 ポスター会場8 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:松田 憲昌(小倉記念病院 麻酔科・集中治療部)

[P70-6] 当院で経験した腫瘍による気道緊急症例

千田 康之, 菊地 紘彰, 佐々木 徹, 石田 時也 (太田西ノ内病院救命救急センター・麻酔科)

[緒言]当院は福島県において70万人の医療圏を担う病床数1000床の3次医療機関で、麻酔科が中心となり、Emergencv Room(ER)において年間5000台以上の救急搬送患者を受け入れる一方で、手術麻酔、集中治療室での管理も行っている。様々な救急疾患の中でも、気道病変には早急な対応と慎重な管理が求められる。気道を侵す病態の多くは急性喉頭蓋炎や扁桃周囲膿瘍、顔面外傷などで腫瘍の関与は多くない。今回、過去4年間に当院に救急搬送された、腫瘍による気道緊急症例を4例経験したので報告する。[症例]症例1:34歳女性、咳・鼻汁と呼吸苦を主訴に搬送され、頚部CTの結果、声門部の腫瘍が判明し、緊急に気管切開術を施行して気道を確保した。後日、ポリープ切除術を施行した。病理診断は声帯ポリープで、術後に気管切開孔を閉じて退院した。症例2:75歳男性、約1ヶ月前からあった呼吸苦、飲水の逆流が悪化して救急搬送。頚部CTの結果、巨大な喉頭蓋腫瘍が判明し、意識下に経鼻気管挿管を行い、翌日全身麻酔下に切除を行った。病理診断は喉頭蓋のう胞で、その後独歩退院した。症例3:68歳女性、約1ヶ月前からの呼吸苦が悪化し搬送され、頚部CTで気管背側の腫瘤性病変による気管狭窄が判明した。来院時すでに窒息しかかっており、緊急気管切開術を施行し気道を確保した。翌日施行した生検の結果、腫瘤は食道癌のリンパ節転移と判明し、消化器外科にて放射線・化学療法を施行して独歩退院した。症例4:75歳男性、約2週間前からの呼吸苦のため搬送、頚部CTの結果、咽頭後壁の腫瘍性病変が判明し緊急気管切開を施行して気道を確保、その後待機的に腫瘍を切除した。病理の結果は肉腫と診断されたが、本人希望で放射線・化学療法は行わず、気管切開孔を閉じて退院した。[考察・結語]当院では過去4年間に、初診時に外傷による気道緊急のため気管挿管を要した症例が13例、急性喉頭蓋炎または扁桃周囲膿瘍のために緊急気管挿管を要した症例が10例あった。気道緊急症例の原因の多くは炎症や外傷だが、腫瘍も念頭に置く必要がある。また、Ernstらによれば腫瘍による気道緊急で最も多いのは肺癌・気管支癌であり、気管内バルーン拡張やステント留置といった特殊な介入を要することもあるとしているが、今回経験した症例はいずれも気管内に腫瘍が直接出現していなかったことで、特殊な気道確保を要さずにすみ管理にも難渋せず大きな合併症もなかったと考えられた。