[P71-1] EWSによる気管支充填とAPRVの併用で救命しえたANCA関連血管炎によるびまん性肺胞出血の一例
【背景】EWS(Endobronchial Watanabe Spigot)は従来、難治性気胸などの治療として用いられてきた。近年では、喀血に対する治療手段として有効例も報告があるが、それらの殆どがアスペルギローマや気管支拡張症、肺動静脈奇形など局在病変からの出血例である。今回、我々はANCA関連血管炎(AAV)による重症肺出血において、急性期の肺胞出血による呼吸不全をEWSによる気管支充填とAPRV(Airway Pressure Release Ventilation)による圧換気によってコントロールし、救命した一例を経験したので報告する。
【症例】75歳男性。入院5日前から続く血痰で近医を受診し、当院へ紹介入院となった。高度の血痰と発熱あり、CTでは腫瘤影は認めなかったため、感染や血管炎などが疑われ止血剤・抗生剤で加療開始していた。しかし、入院2日目に急激な血痰・呼吸状態の悪化とCTで浸潤影の拡大を認めたため、ICUに入室し挿管・人工呼吸管理とした。CT所見と気管支鏡の所見から、右B6・B9、左舌区などからの出血が多いと判断し、それらに対しEWSによる気管支充填術を施行した。同日からステロイドパルス1000mg/日+後療法を開始した。5日目にANCA陽性を確認できたため、血漿交換を連日で3回行った。呼吸状態や血痰はEWS充填後は一旦悪化は治まっていたが、血漿交換直前から再度呼吸状態が悪化したため7日目にAPRVへ移行した。その後は呼吸状態や遷延していた血痰が改善したため、9日目にCPAP+PS に変更することができた。同時にEWSも抜去しようとしたが、一部のEWSと壁の間から血液の流出がわずかに認められたため、その部位のEWSは留置したままとした。その後も明らかな新鮮血の喀出は認めなかったため、14日目に呼吸器から離脱し、再度、気管支鏡で出血がないことを確認して残留していたEWSを全て抜去した。血痰の再燃も認めず状態も安定していたため19日目にICU退室した。その後は一般病棟で免疫抑制剤の調整などを行い、ADLがほぼ自立した状態まで改善した。
【結論】本症例ではAAVによる肺胞出血が急激に進行したが、EWSやAPRVを駆使することで出血や血液の経気管支的な散布を抑制でき、免疫抑制療法の効果が出るまで呼吸状態を維持することができた。本症例の経験から、びまん性かつ高度の肺胞出血をきたしうる病態においても、特に部位によって出血の強弱がある場合では、EWSは有用な治療選択肢となりうると考える。
【症例】75歳男性。入院5日前から続く血痰で近医を受診し、当院へ紹介入院となった。高度の血痰と発熱あり、CTでは腫瘤影は認めなかったため、感染や血管炎などが疑われ止血剤・抗生剤で加療開始していた。しかし、入院2日目に急激な血痰・呼吸状態の悪化とCTで浸潤影の拡大を認めたため、ICUに入室し挿管・人工呼吸管理とした。CT所見と気管支鏡の所見から、右B6・B9、左舌区などからの出血が多いと判断し、それらに対しEWSによる気管支充填術を施行した。同日からステロイドパルス1000mg/日+後療法を開始した。5日目にANCA陽性を確認できたため、血漿交換を連日で3回行った。呼吸状態や血痰はEWS充填後は一旦悪化は治まっていたが、血漿交換直前から再度呼吸状態が悪化したため7日目にAPRVへ移行した。その後は呼吸状態や遷延していた血痰が改善したため、9日目にCPAP+PS に変更することができた。同時にEWSも抜去しようとしたが、一部のEWSと壁の間から血液の流出がわずかに認められたため、その部位のEWSは留置したままとした。その後も明らかな新鮮血の喀出は認めなかったため、14日目に呼吸器から離脱し、再度、気管支鏡で出血がないことを確認して残留していたEWSを全て抜去した。血痰の再燃も認めず状態も安定していたため19日目にICU退室した。その後は一般病棟で免疫抑制剤の調整などを行い、ADLがほぼ自立した状態まで改善した。
【結論】本症例ではAAVによる肺胞出血が急激に進行したが、EWSやAPRVを駆使することで出血や血液の経気管支的な散布を抑制でき、免疫抑制療法の効果が出るまで呼吸状態を維持することができた。本症例の経験から、びまん性かつ高度の肺胞出血をきたしうる病態においても、特に部位によって出血の強弱がある場合では、EWSは有用な治療選択肢となりうると考える。