第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

呼吸 症例

[P71] 一般演題・ポスター71
呼吸 症例06

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場9 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:京極 都(大阪母子医療センター 集中治療科)

[P71-2] 気管切開後の瘢痕が原因と考えられたAPRV中の皮下気腫・縦隔気腫の一例

氏野 直美, 梅垣 修 (大阪医科大学 集中治療部)

はじめに:気管挿管中の肺への圧外傷による皮下・縦隔気腫はしばしば起こり、まれに緊張性気胸を合併するため注意が必要である。今回、気管切開後の瘢痕が原因と考えられる挿管中の広範囲の皮下・縦隔気腫を経験したので報告する。症例:19歳男性。既往に脳動静脈奇形(AVM)破裂で緊急開頭術・血管内手術歴および、その際の気管切開歴があった。AVM術後の頭蓋変形に対して頭蓋骨形成術が予定された。術直後に合併症と考えられる静脈洞閉塞により意識レベルが低下したため緊急外減圧術を行い集中治療室入室となった。意識障害が遷延し長期挿管となり、第12病日にARDSを合併した。腹臥位、PMX、ステロイドパルス等の治療を開始し、呼吸器設定をAPRVモード(最高気道内圧:25cmH2O)とした。以降、病状は軽快傾向であったが、第20病日の胸部Xpにて頚部、前胸部の皮下気腫を認め、翌日には背部や上腕にまで広がりを認めた。第22病日に呼吸器設定をCPAPモードに変更できたが依然としてhigh PEEP(15cmH2O)が必要であった。第23病日の胸部CTにて著明な皮下気腫および縦隔気腫を認めたため、緊張性気胸の発症を懸念し積極的なPEEP低下につとめ第26病日にはPEEPを10cmH 2Oまで下げられた。病状安定しており第27病日に気管切開術を施行した。その際、甲状腺峡部上方レベルの気管に前回気管切開痕と考えられる穿孔部を認めた。術翌日には呼吸器を離脱でき、また徐々に皮下・縦隔気腫は軽快し、第31病日に病棟転棟となった。考察:気管挿管に合併する皮下気腫は気道内圧上昇による圧外傷の結果であることが多い。その他、歯科治療中、気管異物除去中、気管挿管時、交通外傷などで気道を損傷した際に発症する報告が散見される。しかし本症例はAVM破裂時の気管切開孔が閉鎖せず瘻孔を形成し、APRVによる気道内圧の上昇に伴う瘻孔からのリークにより広範囲の皮下・縦隔気腫が発症した可能性が高く、その発症機序は非常に珍しい。気管切開の既往がある患者の気管挿管管理には注意が必要である。