[P71-4] 体外式膜型人工肺や分離肺換気による呼吸管理を要した気管腫瘍の1例
【背景】中枢性気道狭窄は早期に適切な気道管理をしなければ時として致死的となる。今回我々は体外式膜型人工肺(V-V ECMO)や分離肺換気による呼吸管理を要した気管腫瘍による気道閉塞の一例を経験したので報告する。【症例】37歳、男性【臨床経過】呼吸困難と黄疸で近医を受診、胸腹部CTにて気管分岐部直上と膵頭部に腫瘍性病変を認め緊急入院となるが、酸素化維持困難であり当院へ緊急転院搬送となった。来院時、応答可能ではあったが(E3V1M6)、発声不能で陥没呼吸強度であり、仰臥位では酸素化維持できず坐位にてかろうじて換気可能であった。腫瘍サイズは大きく(21×13mm)、盲目的な気管挿管は出血、腫瘍閉塞を助長する可能性が強かったため、ERにて自発呼吸温存下にV-V ECMOを導入した。同時に、NPPVによる陽圧補助により酸素化改善は伴い、呼吸・循環動態は安定したため、手術室でPTGBD留置と気管支ファイバーにて腫瘍性状を評価し、その後救命救急センター入室とした。関連各科と協議の結果、腫瘍の状況からステント留置が最善と考えられ、手配までの期間はV-V ECMOにて生命維持する方針とした。第2病日に両側肺は完全に無気肺となりV-V ECMOのみでは酸素化維持困難となったため、気道開通目的に緊急硬性鏡下腫瘍焼灼術施行に踏み切った。腫瘍は易出血性で、気管は腫瘍と血餅によりほぼ完全閉塞していた。腫瘍切除と血餅除去にて左主気管支開通を得たが、更なる出血の懸念から右主気管支への介入は困難であった。処置後、左主気管支の再閉塞防止目的に37Frダブルルーメンチューブ(DLT)を挿入し、片肺の呼吸管理を行った。しかし、第3病日にくも膜下出血を発症、第5病日に永眠された。SAH発症までは意思疎通可能であり、また、気管腫瘍の病理診断は悪性リンパ腫であった。【結論】本症例は気管腫瘍により気道狭窄に至った。気管は腫瘍によりほぼ完全閉塞を来し、安易な気管挿管、陽圧換気による呼吸状態増悪を危惧し非挿管、自発呼吸下にV-V ECMOを導入し生命維持を図った。さらに、腫瘍切除施行後はDLTによる分離肺換気をよぎなくされた。我々の施行した呼吸管理戦略について文献的考察を加え報告する。