[P71-6] 医原性気胸と自然気胸の鑑別に苦慮した1症例
【緒言】今回、顎矯正手術後に生じた突然の低酸素症に対して緊急外科的気道確保を行った症例の周術期管理を経験した。【症例】患者は17歳の女性。下顎前突症,巨舌症の診断に対し下顎枝矢状分割術ならびに舌正中部分切除術を施行した。帰室10時間後、「肺が痛い」と呼吸器症状を訴えた。翌日、酸素投与を行っていたにも関わらず突然SpO2が66%に低下し、上気道閉塞を疑って緊急外科的気管切開を行った後、切開部の止血術を施行したが、純酸素投与でも酸素化は改善しなかった。止血術中に胸部Xpを撮影したところ右肺気胸を認め、右胸腔ドレーンを留置した。酸素化は改善されたが、止血術直後の胸部Xpで右肺の透過性の低下認め、再膨張性肺水腫の合併の可能性を疑った。術後はICUに入室して人工呼吸管理を継続した。呼気終末陽圧(PEEP)は5cmH2O程度とし、気胸の悪化、肺瘻形成を避けるために低圧で補助換気を続け、再手術後第2病日に呼吸器を離脱した。【考察】気胸に続発する再膨張性肺水腫は心原性の肺水腫等と異なり、高いPEEP設定、高圧の換気は肺合併症を増悪させる可能性がある。一方、再膨張性肺水腫は、気胸の罹病期間が一定以上にならないと生じないと考えられている。本例では、低酸素症の原因としてARDS、誤嚥性肺炎等を鑑別に挙げた。それぞれの人工呼吸管理法は非常に異なるため、十分な検討が必要となるが、詳細な情報収集により適切な加療を行い得た。