第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

補助循環

[P72] 一般演題・ポスター72
補助循環03

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場10 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:小林 誠人(公立豊岡病院 但馬救命救急センター)

[P72-6] VA-ECMO管理中に再発性,多発性の動脈性出血を発症した混合性結合組織病の一例

斉藤 仁志, 西川 直樹, 土岐 崇幸, 八木 泰憲, 森本 裕二 (北海道大学病院 麻酔科)

【症例提示】56歳女性.19年前に混合性結合組織病の診断を受け,16年前に肺高血圧症,7年前に間質性肺炎を発症して,ステロイドと抗凝固薬の内服加療,及び増悪時に複数回のステロイドパルス療法とエンドキサン療法を受けていた.今回,微熱,息切れを主訴に来院し,細菌性肺炎と間質性肺炎の急性増悪の診断で入院加療を受けていたが症状は改善せず,入院22日目に急性呼吸不全からの低酸素血症を発症し,ショック状態となった.気管内挿管と人工呼吸管理を実施し,動脈血ガス分析上の数値は速やか改善した.しかし,カテコラミンの持続投与を行ってもショック状態からの離脱が困難であったことから,肺高血圧症の増悪を疑ってVA-ECMOを導入してICUに入室した.しかし,入室6時間後には皮下出血を伴う腹部膨満が出現し,緊急造影CT検査で右第3腰動脈からの出血と後腹膜血腫が確認された.選択的動脈塞栓術を実施,凝固因子,血小板の輸血を行って一時的に循環動態は安定化したが,その8時間後には更に第9,10,11肋骨動脈と右肋下動脈が破綻して,腹腔内出血が再燃,腹部コンパートメント症候群を疑う経緯を辿って多臓器不全に陥った.外科的処置による血腫除去術が検討されたが,その適応は無いと判断され,内科的な加療を継続したが翌日に永眠された.【考察】混合性結合組織病は,厚労省により特定疾患に指定されている原因不明の自己免疫性疾患である.肺高血圧症の有無が予後に影響するとされ,内膜肥厚による血管内腔の狭小化がその発症機序であることが示唆されている.患者の拡張した肺動脈内には多数の壁在血栓があり,マシテンタン,シルデナフィル,セレキシパグ,及び,ワーファリンの投与が行われていた.VA-ECMO管理中に末梢の動脈が破綻する頻度は高いとは言えない.再発性,多源性に破綻が生じた理由として,原疾患による影響,そしてステロイドや免疫抑制剤の投与による影響があったのでは無いかと推測された.治療内容と経過について後方視的な検討を加え,救命の可能性について検討したい.