第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

補助循環

[P73] 一般演題・ポスター73
補助循環04

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場11 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:萩原 祥弘(東京都立多摩総合医療センター救命救急センター)

[P73-5] 集学的治療によって救命しえた劇症型A群レンサ球菌感染症(TSLS)の一例

角田 美保子, 小坂 眞司, 齊藤 眞樹子, 鈴木 秀章, 康 美理, 齋藤 倫子, 矢口 有乃 (東京女子医科大学 救急医学)

【背景】劇症型A群レンサ球菌感染症(TSLS)は突発的に発症し、急激に多臓器不全に進行することの多い重篤な疾患である。TSLSによる腹膜炎、術後ARDSに対してV-VECMOを導入し集学的治療により救命した一例を経験したため報告する。【症例】24歳、女性【主訴】発熱、腹痛【既往歴】てんかん、子宮筋腫【経過】2週間前に悪臭の帯下増加、外陰部掻痒感あり。3日前より悪寒あり、近医で解熱鎮痛剤、抗菌薬内服を開始するも、発熱、腹痛、嘔気の増悪あり救急搬送された。来院時、意識清明、BT38.2℃、血圧124/96mmHg、HR67回/分、呼吸数18回/分、SpO2 98%(RA)、 身体所見で腹部軟、軽度膨満、腸蠕動減弱し側腹部、心窩部に圧痛、臍下部、下腹部に反跳痛を認めた。血液検査では、WBC 8910/μl、CRP19.93mg/dl、proCT 24.05ng/mlと炎症反応上昇、動脈血液ガス分析でpH 7.429、pO2 95.7mmHg、pCO2 22.3mmHg、HCO3 14.4mmol/L、BE-8.3mmol/L、lactate 7.1mmol/Lと乳酸アシドーシスを認め、SOFA score0点であった。造影CTで、骨盤内に腹水貯留、脂肪組織混濁、小腸拡張を認め、明らかなfree airは認めなかった。経時的に血圧低下を認め、腹膜炎、敗血症性ショックの診断で抗菌薬TAZ/PIPZ、AZM、CLDM投与、輸液、ノルアドレナリン、バゾプレシン持続投与を開始し、サイトカイン除去目的にPMX、CHDFを施行、DICに対してリコモジュリン製剤、AT製剤補充を行った。腹水増加を認め、腹水穿刺で膿性の排液を認めたため開腹洗浄ドレナージ術を施行した。術中所見では、ダグラス窩、右側腹部に多量の膿性腹水を認め、腸管穿孔や壊死所見はなく、卵巣に発赤あるも明らかな感染源は認めなかった。術前より呼吸状態悪化し、リザーバーマスク8L/分でPaO2 95.mmHg 、P/F比119と低下を認め気管挿管、人工呼吸器管理を行ったが、術後よりP/F比65と低下、胸部X線で両側肺水腫を認め、ARDSと判断しV-V ECMOを導入し、血液培養、腹水、膣分泌液よりStreptococcus pyogenesが検出され、TSLSと診断した。徐々に呼吸循環動態は改善し、第6病日にP/F比336、V-VECMOを離脱、第12病日に人工呼吸器離脱、抗菌薬投与を継続し、第17病日に集中治療室退出となった。【結語】劇症型A群レンサ球菌感染症(TSLS)の一例を経験した。ARDSに対してECMO導入症例は近年増加を認める。TSLSは重篤な経過をたどるがARDSに対して術後早期にV-VECMOを導入し、集学的治療により救命しえた一例であった。