[P74-5] ICUにおける経験学習を促す取り組みの現状と課題
【背景】当院ICUでは、2016年度より経験学習に着目し、教育者と教育を受ける側が共に育つ、「共育」を目標に活動している。経験学習とは、適切な「思い」と「つながり」を大切にし、「挑戦し、振り返り(リフレクション)、楽しみながら」仕事をするとき、経験から多くのことを学ぶことができるという学習方法である。この経験から学ぶ力の3つの要素を支援するために、独自で作成した「リフレクションシート」を主体とした教育を実施している。【目的】ICUにおける経験学習を主体とした教育の現状を調査し、課題と改善策を検討する。【方法】2016年4月から、kolbの経験学習サイクルを参考にしたリフレクションシートを導入し、さらにホワイトボードを用いたカンファレンスや、経験学習に関する学習会を実施した。評価方法は、組織学習診断テストを参考に作成した選択式および自由記述式アンケートを定期的に実施した。【結果】リフレクションに関するアンケートは、回収率85%(33/39名)であり、リフレクションシートの普及率は、9割以上であった。目標管理に活用できていますか?「はい」76.3%、あなたにとって容易でしたか?「はい」15.2%、振り返る力は身につきましたか?「そう思う」10人(30.3%)、「どちらでもない」20人(60.6%)、「まったく思わない、そう思わない」3人(9.1%)、であった。自由記述では、「振り返りの機会になった」という肯定的な意見の反面、「労働時間外での負担が増えた」「タイムリーな振り返りができない」などの否定的な意見があった。 組織学習診断テストは、リフレクションシート導入1年目、2年目の年度末にそれぞれ実施し、回収率97%(34/35名)、94%(37/39)だった。「精神的な安全」2年目平均64.3点(1年目平均68.4点)、「違いの尊重」54.8点(54.8点)、「新しいアイデアへの寛容度」65.4点(65.3点)、、「学習を促進するリーダーシップ」/75.3点(75.7点)であり、2年間で有意差はなかった。しかし、「内省にかける時間」59.2点(51.7点)p<0.01であった。【結論】リフレクションシートは、効果が不十分かつ容易ではなく、支援体制が不十分であることが浮き彫りになった。今後、経験学習を促すためには、スタッフへのリフレクションの実用性を感じることができる仕組みづくりや、リフレクションシートの改定・選択制の検討、リフレクションを支援するスタッフ教育が必要である。