[P76-1] 長期に集中治療を要した甲状腺クリーゼの一例
【背景】甲状腺クリーゼは、甲状腺中毒症を基礎疾患として甲状腺ホルモンの過剰作用に対する代償機構が破綻することで中枢神経症状、発熱、頻脈、心不全、消化器症状など多臓器に障害を来す緊急疾患で、しばしば集中治療を要する。【臨床経過】57歳女性。数十年来のバセドウ病があり、チアマゾール内服を行っていたが服薬アドヒアランスは不良だった。合併症として慢性閉塞性肺疾患(COPD)があった。1か月前から両下腿浮腫、労作時呼吸困難が出現し、増悪したため当院に救急搬送された。甲状腺中毒症、頻脈性心房細動、心不全、下痢を認めていたことから甲状腺クリーゼの確定診断に至り、ICUに入室した。甲状腺クリーゼに対してチアマゾール45mg、ヨウ化カリウム、ヒドロコルチゾン、心房細動の心拍数コントロールとしてランジオロールを開始し、血圧低下も認めたためノルアドレナリンを併用した。第2病日から尿量が低下し,溢水傾向を認めたため持続的血液濾過透析(CHDF)で除水を開始した。次第にCO2貯留し酸素化能も低下したため、第3病日に気管挿管し人工呼吸管理を開始した。除水、ノルアドレナリンの漸減、呼吸器のweaningを進め、第8病日に抜管,第10病日にCHDFを離脱した。しかしその後再度高CO2血症が増悪し、第13病日に再挿管となった。甲状腺ホルモンが低値となっていたため、減量していたチアマゾールを中止し、レボチロキシンナトリウムを開始した。さらに溢水のコントロールを目的として第14-16病日に再度CHDFを施行した.溢水だけでなく,COPDにICU acquired weaknessが合併したことにより高CO2血症をきたしていると判断し、第20病日に気管切開を施行した。その後第26病日にICUを退室した。【結論】甲状腺ホルモンのコントロールに難渋し心不全が遷延、さらにCOPDの既往もあったことから長期間の集中治療を要した甲状腺クリーゼの一例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する。