第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

内分泌・代謝

[P76] 一般演題・ポスター76
内分泌・代謝01

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場14 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:小北 直宏(旭川医科大学病院 集中治療部)

[P76-4] 血行動態の維持に難渋した未治療甲状腺クリーゼの1症例:症例報告

仲野 りりこ1, 立花 俊祐1, 田口 まゆ1, 石岡 慶己1, 井上 光1, 小野 翼2, 堤 明人2 (1.滝川市立病院 麻酔科, 2.滝川市立病院 内科)

【背景】
日本における甲状腺クリーゼの発症率は,100万人に対して年間2人と言われ, 非常にまれな疾患である1).その症状は、多臓器不全,心不全,呼吸不全そして不整脈など多岐にわたっており,かつ重篤で治療に難渋することも多く,死亡率は高いとされる2).今回われわれは,血行動態の維持に難渋した未治療甲状腺クリーゼに対し,集学的治療を行い救命に至った症例を経験したので,文献的考察を含めて提示する.
【臨床経過】
61歳男性,既往歴や内服歴はなし.悪心嘔吐,下痢,心窩部痛を主訴に内科病棟に入院した.採血にてfT3:3.31,fT4:6.50,TSH<0.01,TRAb:強陽性であり,甲状腺クリーゼと診断され抗甲状腺薬等の投与が行われた.入院当日の夜間に著しい頻脈と倦怠感を訴えショックとなり,集中治療室(ICU)へと入室した.ICU入室時血圧:100/60,心拍数:110/分で不整,SpO2:96%,体温:,SOFAスコア:11,APACHE2スコア:23(予測死亡率:46%)であり,重症甲状腺クリーゼであると判断した.抗甲状腺薬と無機ヨード,加えてステロイドの投与,血行動態安定のために昇圧剤とβブロッカーを持続投与したが,心房細動と血圧の急激な乱高下が持続した.総ビリルビン値の上昇も認めたことから,治療ガイドラインにおける“コントロール不能の甲状腺中毒症”と診断し,血漿交換を施行した.その後,抗甲状腺薬が奏功し甲状腺ホルモン値が低下するにしたがい血行動態も安定し,ICU入室15日後に一般病棟へと転棟した.
【結論】
血行動態の維持に難渋した未治療甲状腺クリーゼの1症例を経験した.きわめて重篤度の高い症例であったが,ICUでの治療と管理が奏功し救命することができた.
【参考文献】
1)Yosuke Ono et al. Medicine 2016. 95(7):1-6
2)Takashi Akamizu. Thyroid 2018. 28(1):32-40