第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

内分泌・代謝

[P76] 一般演題・ポスター76
内分泌・代謝01

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場14 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:小北 直宏(旭川医科大学病院 集中治療部)

[P76-7] 急性副腎不全による心停止が疑われた1症例

大久保 訓秀, 黒木 将貴, 小島 啓, 坂本 尚子, 伊野田 絢子, 加藤 崇央, 小山 薫 (埼玉医科大学 総合医療センター 麻酔科)

【はじめに】原因不明の心停止となり、病態として急性副腎不全の関与が疑われた症例を経験したので報告する。【症例】症例は40歳代女性。10年前に下垂体腺腫で手術、術後はヒドロコルチゾン、レボチロキシン内服し当院内科でフォローされていたが、経過中に特記すべきことはなかった。今回、3日前からの40℃台の発熱、腰痛で救急搬送された。救急外来で意識レベル低下、血圧低下、その後PEAとなった。心肺蘇生開始、アドレナリン1mg静注、約3分で自己心拍再開、気管挿管しICU入室となった。蘇生後の画像診断では肺塞栓症等の所見はなかった。ICU入室後もドブタミン、ノルアドレナリン、アドレナリン持続静注への反応が悪い状態であった。3日前からの発熱、下垂体腺腫の既往から、感染を契機とした急性副腎不全の関与を疑い、抗菌薬投与を含めた全身管理に加えてヒドロコルチゾンのボーラス投与、持続静注を開始したところ、約3時間後から循環動態は急速に改善、意識晴明、酸素化良好で入室2日目に抜管した。腰痛、入院時のCT、血液培養、尿培養から腎結石性腎盂腎炎(大腸菌)による敗血症と診断、3日目に尿管ステントを挿入、一般病棟へ転床した。【考察と結語】急性副腎不全はステロイドの絶対的または相対的な欠乏により循環障害を起こす病態であり、誘引としては慢性副腎不全に感染、外傷等のストレスが加わりステロイド需要が増加した場合や、長期服薬中のステロイド薬の減量や中止等がある。既往がない場合でも敗血症等でカテコラミン投与への反応が悪い場合や全身状態に合わない血糖低値の場合にも相対的副腎不全を疑い、ヒドロコルチゾン投与が必要となりうるが、急激に心停止となる例は稀である。本症例は搬送直後に心停止をきたしたが、既往歴、現病歴、治療経過から感染を契機に発症した急性副腎不全の関与を疑い、ステロイド投与により循環動態の急速な改善を得ることが可能であった。