第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

内分泌・代謝

[P77] 一般演題・ポスター77
内分泌・代謝02

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場15 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:浅賀 健彦(香川大学医学部付属病院・集中治療部)

[P77-6] ICU入室患者における高カロリー輸液投与開始早期の低リン血症の現状について

浅香 倫子1,植村 昌弘1,中野 剛志1,安井 友佳子1,郷間 厳2,小畠 久和3 (1.堺市立総合医療センター薬剤科,2.堺市立総合医療センター呼吸器内科,3.堺市立総合医療センター集中治療科)

【背景/目的】
Refeeding syndrome(RFS)とは、低栄養状態の患者に急速に糖負荷を行った場合、糖代謝の亢進によって糖・電解質の細胞内移動が起こり、時に心停止などの重篤な合併症を起こす一連の状態である。RFSの予防には、カリウム、マグネシウム、リン(P)といった電解質の血中濃度低下を防ぐために、適切に電解質の補正を行う事が重要である。NICEガイドラインでは栄養開始前に電解質を調節する必要性よりも、栄養開始後から適宜調節を行うとしているが、血中電解質濃度や投与量、投与速度についてどの程度の調節を行うべきかについては明記されていない。重症患者は低栄養状態に晒されることが多く、早期に栄養療法を開始することが大切であり、RFS予防には電解質の推移を知ることも重要である。今回は当院ICU入室患者における高カロリー輸液(TPN)投与開始前後に血清P値を測定した患者についての検討を行う。
【方法】
2017年1月~12月に当院ICU入室中にTPNが開始された患者のうち、TPN開始前、および開始後72時間以内に血清P値の測定が行われた患者を対象に、後方視的に診療録調査を行った。血液浄化療法(HD,CHDF)を受けている患者、及び15歳以下の患者は除外とした。TPN開始後の血清P値が当院基準値以下となる2.1 mg/dL以下を低P血症群とし、対照群を非低P血症群とした。調査項目として、性別、年齢、体重、腎機能、血清P値推移、P補正の有無、TPN開始前後の糖負荷、インスリン・利尿薬の使用などRFSハイリスク該当の有無について検討を行った。RFSハイリスク項目はNICEガイドラインを参考とした。検定には、2群間の割合の比較にはPearsonのχ2検定、平均値の比較にはt検定を用いた。
【結果】
対象患者60人のうち、TPN開始後の低P血症群と非低P血症群はそれぞれ29人、31人であり、TPN開始後の血清P値は、各々1.7±0.3mg/dL、3.0±0.7mg/dLであった。各群で、性別、年齢、体重、腎機能、TPN開始前の血清P値、RFSハイリスクに該当する各項目、P補正の有無に有意差はなかった。TPN開始時の糖質投与速度は、各々1.59±0.50mg/kg/min、1.88±0.88mg/kg/minであり、両群間で有意差はなかった。
【結論】
今回の検討では、TPN開始前後での血清P値の傾向を示すことはできなかった。TPN開始時の糖質投与速度が低速のためと考えられた。