第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

内分泌・代謝

[P77] 一般演題・ポスター77
内分泌・代謝02

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場15 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:浅賀 健彦(香川大学医学部付属病院・集中治療部)

[P77-5] 薬剤性抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(SIADH)により重篤なCO2ナルコーシスを呈した脳死左肺移植後の一例

白木敦子,川本修司,瀬川一
(京都大学医学部附属病院)

【背景】SIADHは種々の原因により発症する。今回我々は薬剤性と思われるSIADHによって急速に進行した低Na血症から意識障害をきたし、CO2ナルコーシスに陥った脳死左肺移植後の一例を経験したので報告する。【症例】60歳男性。特発性肺線維症の診断でX-7年に脳死左肺移植を施行され、在宅酸素療法中であった。X年1月帯状疱疹に罹患、帯状疱疹後神経痛に対して2月14日からアミトリプチリン30mg/日が開始された。その数日後には食欲低下、転倒、呂律困難が出現し、2月19日より同薬を自己中断した。2月20日の定期受診時にすでに血清Na112mEq/Lを認めていたが指摘されず、翌21日に意識障害のため救急搬送された。来院時著明な高二酸化炭素血症(PaCO2 210.5mmHg)を認めたため、人工呼吸管理目的でICU入室となった。血液検査では著明な低Na血症(血清Na 110.9mEq/L)を認めた。脱水の所見はなく、低血清浸透圧(272mOsm/kg・H2O)にも関わらず血漿中にADH(2.3pg/ml)が検出され、尿浸透圧以外の診断基準を満たしたことから、SIADHと診断した。発症の経緯からアミトリプチリンによる薬剤性SIADHと考えられた。すでに同薬は中止されていたため、Na補充と自由水制限を行った。低Na血症の改善とともに意識状態は改善し、入室3日目に抜管した。その後、血清Na135mEq/L前後で全身状態は安定し、入室7日目にICUを退室した。【考察】薬剤性SIADHの原因薬剤は利尿薬を始めとして様々だが、今回被疑薬となったのは三環系抗うつ薬のアミトリプチリンで、ADH分泌促進によりSIADHをきたすと考えられている。本症例では内服開始後数日ですでに低Na血症の症状が出はじめていたが、診断の遅れと、元から存在した低肺機能とが相まって意識障害から重篤なCO2ナルコーシスに陥ったものと思われた。【結論】薬剤性SIADHでは数日の経過で急速に低Na血症が進行することがあることに留意するべきである。