第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

内分泌・代謝

[P77] 一般演題・ポスター77
内分泌・代謝02

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場15 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:浅賀 健彦(香川大学医学部付属病院・集中治療部)

[P77-4] 頚髄損傷を契機とした低栄養により重度の低ナトリウム血症をきたした一例

西原 教晃1, 萩原 裕也2, 菊池 謙一郎2, 郭 光徳2, 四釜 裕睦2, 其田 一2, 山蔭 道明1 (1.札幌医科大学 医学部 麻酔科, 2.市立釧路総合病院 麻酔科)

【背景】
低ナトリウム血症は救急外来でしばしば経験する病態であり、中等度以上の場合は死亡率が上昇する。低ナトリウム血症の多くは、内分泌疾患や精神科疾患が原因とされているが、今回、頚髄損傷によって慢性的な摂食不良による低栄養となり、重度の低ナトリウム血症となった症例を経験したため、文献的考察を含め報告する。
【臨床経過】
54歳の女性。7年前に外傷性頚髄損傷により、第5頚髄以下の不全麻痺となった。突然の幻視、不眠、脱力感、意識障害を認めたため救急搬送となった。血液検査で、全般的な電解質の低下、とくに重度の低ナトリウム(98.6 mmol/l)が見られたため、集中治療が必要と判断した。集中治療室への入室後の治療方針として、5 mmol/l/日の速度で血清ナトリウム130 mmol/lを目標とし、細胞外液の輸液と3%高張食塩水を用いたナトリウム補正を選択した。同時に、低ナトリウム血症の鑑別のため、各種内分泌学的検査を行った。その結果、下垂体ホルモンや副腎皮質ホルモンの低下はなく、多飲・多尿もなかった。ここ数年で著明に食事量が減少し、るいそうが進行してきたことから低栄養による慢性的な低栄養による低ナトリウム血症と考えた。第10病日に当初の目標であった血清ナトリウム濃度130 mmol/lを達成した。また、補正に伴う構音・嚥下障害の増悪や、不全麻痺の進行は確認されなかった。また低栄養に対して、栄養補助食品を併用した栄養管理を行ったが、摂食量は増加しなかったため、電解質の改善も進まなかった。今後の摂食障害を予防するため第34病日に胃瘻造設を行った。経口摂食に加えて経管栄養を行うことで栄養状態の改善が得られ、第64病日に自宅退院となった。
【結論】
頚髄損傷を契機とした低栄養により重度の低ナトリウム血症をきたした一例を経験した。慢性期における頚髄損傷患者における栄養療法の重要性を痛感した症例であった。