第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

内分泌・代謝

[P78] 一般演題・ポスター78
内分泌・代謝03

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 2:40 PM ポスター会場16 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:梅垣 修(大阪医科大学集中治療部)

[P78-1] 橋中心髄鞘崩壊症を来した糖尿病性ケトアシドーシスの1例

市川 通太郎, 小川原 葵, 山川 耕司, 柳谷 信之, 岩下 具美 (長野赤十字病院 救命救急センター)

【背景】 橋中心髄鞘崩壊症(以下CPM)は電解質異常を急速に補正した際に発症する脳橋底部の原発性脱髄疾患である。四肢麻痺、仮性球麻痺、痙攣、意識障害を来たし、重症例では死亡することもある。今回急速な電解質補正を行なっていないにも関わらずCPMを来した糖尿病性ケトアシドーシス(以下DKA)を経験したので報告する。【臨床経過】 43歳男性。身長180cm、体重120kg。既往:糖尿病(治療は自己中断)。3日間本人と連絡が取れず両親が自宅を訪ねたところ、倒れて動けない状態であり救急要請した。来院時現症:SpO2 97% O2 6L/minマスク 呼吸回数30回/分、血圧148/77mmHg 脈拍 111回/分、GCS E3V4M6 四肢麻痺なし、体温37.5度、肺音 清 心雑音なし、腹部 軟、圧痛なし、ケトン臭あり。血液検査: WBC 14650/μl、BUN 102 mg/dl、Cre 2.18 mg/dl、Na 140 mEq/l、K 5.9 mEq/l、Cl 97 mEq/l、血糖772mg/dl、CRP 40.9 mg/dl、血中ケトン体分画:アセト酢酸 3289μmol/l、3-ヒドロキシ酪酸 8835μmol/l、総ケトン体 12124μmol/l。 感染源検索目的のCTで仙腸関節炎を認め感染が契機となったDKAと診断した。高度の肥満体型で努力様の頻呼吸が続き呼吸筋疲労があったため気管挿管を行った。抗生剤治療およびDKAに対し大量輸液とインスリン持続静注を行った。第8病日にはインスリン持続静注を終了し、皮下注射へ変更した。第16病日に左上肢の脱力が出現し、最終的に四肢脱力となった。呼吸機能は保たれていたため第24病日に人工呼吸器を離脱できた。第30病日の頭部MRIで橋に信号異常があった。血清Na値を急速に補正した経過は無く、高血糖による浸透圧異常に伴うCPMと診断した。第32病日に努力様呼吸になり再度気管挿管を行った。CPMに伴う呼吸機能低下と考え気管切開した。その後はリハビリテーション中心に治療を行った。第127病日に人工呼吸器を離脱した。第137病日には気切チューブを抜去した。第180病日の頭部MRI再検では所見に変化は無かった。第212病日にリハビリ転院した。転院時には上肢筋力は車椅子で自走できるまで改善した。下肢筋力も改善傾向だったが自立には至らなかった。【結論】 高血糖緊急症の治療経過で神経学的異常が出現した場合はCPMを疑う必要がある。