第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

内分泌・代謝

[P78] 一般演題・ポスター78
内分泌・代謝03

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 2:40 PM ポスター会場16 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:梅垣 修(大阪医科大学集中治療部)

[P78-5] 腫瘍摘出術後に低血糖を認めた褐色細胞腫の1例

山本 剛史, 西川 昌志, 中山 祐子, 佐野 宏樹, 佐藤 康次, 野田 透, 岡島 正樹, 谷口 巧 (金沢大学附属病院 麻酔科蘇生科)

【背景】褐色細胞腫では高頻度に術前の糖代謝異常を認めるが、腫瘍摘出後に低血糖を認めることも知られており、その発生頻度は10数%ほどと報告されている。術後低血糖の発生機序として、腫瘍摘出後の急激なカテコラミン濃度低下によるインスリンの反跳性分泌などが考えられているが、中でもインスリン分泌抑制に関与するα2受容体への親和性が高いアドレナリンが術前から高値であることが術後低血糖のリスクと考えられる。今回、術前に血中アドレナリン高値を示し術後に遷延する低血糖を認めた1例を経験したので報告する。【臨床経過】40代、男性。検診で高血圧と高血糖を指摘された。右副腎に45×45×75 mm大の腫瘍を指摘され、血中カテコラミン高値(アドレナリン3357 pg/ml、ノルアドレナリン6079 pg/ml、ドーパミン30 pg/ml)を認め、シンチグラフィで右副腎への集積を認めたことから褐色細胞腫と診断された。術前のHbA1cは8.1%、術前精査から糖感受性インスリン分泌能低下を主体とした糖尿病と考えられた(HOMA-IR 1.1、HOMA-β 9%、CPR 0.84 mg/dl、グルコースクランプ検査 Glucose Infusion Rate 5.5)。術前ドキサゾシン18 mgとビソプロロールフマル酸1.75 mgの内服による血圧コントロールに加え、食事療法とインスリン療法(インスリン29単位/日)が導入された。手術は全身麻酔+硬膜外麻酔で腹腔鏡下に腫瘍を摘出した。術中腫瘍操作による血圧変動が大きく、摘出直後からみられた血圧低下に対してノルアドレナリンを併用しながら集中治療室に入室した。手術室退室時の血糖値は90 mg/dlであったが、集中治療室入室時の血糖は52 mg/dlまで低下しておりブドウ糖の補充を要した。その後も血糖低値が遷延し、最終的にブドウ糖10 g/時の持続投与により血糖値は安定した。術後3日目には糖負荷を中止したが血糖は安定して推移し、5日目には一般病棟へ転棟した。【結論】当院で過去2年間に行われた褐色細胞腫摘出術13例を検索した結果、術後に低血糖を認めた症例は2例であった(発生率15.3%)。本症例の術前血中アドレナリン値(3357 pg/ml)は13例中最高値であった。もう1例も、本症例同様術前に糖代謝異常を発症しており、術前の血中アドレナリン値(522 pg/ml)は本症例に次いで2番目に高い値であった。インスリン分泌抑制に関与するα2受容体への親和性が高いアドレナリンが術前から高値であることは、術後低血糖のリスクと考えられる。