第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

感染・敗血症 症例

[P8] 一般演題・ポスター8
感染・敗血症 症例02

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場8 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:安宅 一晃(奈良県総合医療センター 集中治療部)

[P8-6] 外傷後脳出血による入院中に破傷風を発症した一症例

赤木 洋介1, 稲井 舞夕子1, 岡 聖子1, 本橋 靖子1, 本郷 貴識2, 桃木 律也3, 小林 洋二1, 水川 俊一1 (1.岡山済生会総合病院 麻酔科, 2.岡山済生会総合病院 救急科, 3.岡山済生会総合病院 内科)

【背景】破傷風は五類感染症で近年では毎年100例近くの報告がある.発症すると治療を行っても致死率は10%程度ある.今回,頭部外傷により脳出血を認め入院していたために,破傷風の鑑別とその治療が遅れてしまった症例を経験したので報告する.【臨床経過】患者は91才女性,143cm,50kg.既往歴は高血圧と糖尿病.入院4日前に用水路に転落し動けなくなり当院へ救急搬送された.右膝に擦過傷を認め創傷処置を行い,近医受診を指示され帰宅した.入院3日前に自宅で2回転倒し歩行不能となった.その後,体動困難となり当院へ救急搬送された.来院時E3V4M6でABCDEに問題はなかった.頭部CTで右急性硬膜下血腫と左外傷性くも膜下出血を認めたため入院となった.また右膝に熱感と浸出液を認めていたので,創傷処置も行われた.入院後はリハビリを行いながら,治療継続していたが入院5日後に噛みにくさと飲み込みにくさの訴えあり,翌日脳卒中を疑いMRIを行ったが問題なく外傷後の仮性球麻痺症状と推定された.夕方頃から発語しにくさと開口障害が出現した.入院7日後に項部硬直も認めたため,破傷風が疑われ治療を開始し,皮膚科コンサルトの後にデブリードマンが行われ,膿培養が提出された.入院8日後の朝に意識状態が悪く呼吸不全を認めたため,緊急で気管挿管が行われたが強い開口障害を認めていた.また心エコーにてasynergyを認め緊急CAGを行ったが有意な所見はなく,たこつぼ型心筋症が疑われた.ICU入室後,鎮痛・鎮静を行いながら対症療法を継続した.日を追うごとに開口障害は徐々に改善し心収縮も回復してきた.創部培養では原因菌は示されなかった.挿管管理が長くなったために入院14日目に気管切開が行われ,入院19日目に呼吸器から離脱できた.経過良好で入院21日目にICUを退室した.入院48日目に完全に開口できるようになったが,項部硬直は持続したままであった.入院56日目にリハビリのために転院となった.【結論】今回,外傷により脳出血を認めていたために破傷風の症状に気付くのが遅れ,治療が遅れてしまった症例を経験した.幸いにも救命できたが,救急での初療段階で破傷風への適切な治療を行うことが求められる.