[P85-5] 全身麻酔中にcapillary leak syndrome様の重篤な経過をとった薬剤性肺水腫疑いの1例
【背景】全身麻酔中のアナフィラキシーショックまたは脳血管疾患(神経原性)による非心原性肺水腫は稀ではないが,capillary leak syndromeによる肺水腫の報告は稀である.【臨床経過】74歳男性.アレルギー歴,肺疾患の既往歴なし.某日,前立腺肥大症に対する経尿道的前立腺レーザー核出術(HoLEP)に対し全身麻酔を導入.導入約30分後からSpO2低下が進行,血圧低下も遷延しエフェドリン,フェニレフリンにも良好に反応せず,導入1時間後にはPaCO2とEtCO2の解離および混合性アシドーシスを認めた.体表に皮疹なし.経食道心エコー検査では明らかな低左心機能や肺塞栓の所見を認めず,その後もショックバイタルのままP/F比が悪化したため手術を中断し,発症約4時間30分後にICUへ入室.胸部CTでは著明な両側肺水腫像と少量の左胸水を認めた.ICU入室後もhigh PEEPに対しP/F 比80未満が持続したためVV-ECMOを導入.本病態が薬剤性肺水腫,その他肺を中心としたサイトカインストームと考え,膠質液を含む補液の急速投与に加えカテコラミンや高用量ステロイドなどを投与,AKIの治療および炎症性サイトカイン除去目的にCRRTを併用し,全身麻酔で使用した薬剤を避けながら集中治療を行った.第2病日から自尿がみられ,肺水腫は徐々に改善傾向となり,第5病日にVV-ECMOを離脱,第12病日に抜管した.その後も状態安定し第17病日にICUを退室,後遺症なく第50病日に独歩退院した.退院後,本病態に対しアナフィラキシーまたはcapillary leak syndromeの両面で精査を進めており,それらの結果と若干の文献的考察を併せて報告する.【結論】全身麻酔中に重篤化した薬剤性肺水腫(capillary leak syndrome)疑いの症例を経験した.