[P86-3] 非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)が有効であった急性一酸化炭素(CO)中毒の一例
【背景】急性一酸化炭素(CO)中毒に対する高圧酸素療法(HBO)は必須ではなく、意識障害や心筋の虚血性変化、重篤なアシドーシス、COHb≧25%などの重症例で検討されるものの、厳密なHBOの適応や有効性に関しては議論の多いところである。また、HBOの施行が可能な施設は限られており、実臨床では自施設での治療を優先させるか、転院させるべきか悩ましい場面が多々あるものと思われる。今回、急性CO中毒による意識障害に対して、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)がCOHb値の改善を含めて有効であったと考える症例を経験したため報告する。【臨床経過】症例は20歳の男性で既往歴や手術歴は無し。某年6月半ばの午後3時ごろ、車内で練炭自殺を図っているところを祖父母に発見され救急要請、当院搬送となる。来院時の意識レベルはJCSII-30、血圧152/91mmHg、脈拍135bpm、体温38.7℃、呼吸数28/分、酸素飽和度95%(10Lリザーバーマスク)。顔面紅潮および左肩と左前腕にそれぞれ1%程度の2度熱傷あり。心電図所見は洞性頻脈だが明らかな虚血を示唆するST変化は認めず、そのほか身体診察上も明らかな異常所見なし。動脈血液ガス(BGA)はpH 7.378、PaCO2 31.5mmHg、HCO3- 18.1mmol/Lの代謝性アシドーシスでCOHb 30%であった。HBO施行可能な高次施設へ転送するか当院で高濃度酸素投与による加療を行うかを検討した結果、NPPV装着の上、当院での治療を継続し注意深く経過を観察する方針となった。治療開始1時間後のBGAはpH 7.395、PaCO2 35.6mmHg、HCO3- 21.3mmol/L、COHb 12.1%でCOHb値の改善あり、このまま気道を含めたトラブルなく順調に経過すれば高次施設への転送は必要ないと判断し、当院での治療継続の方針となった。翌朝のBGAはpH 7.443、PaCO2 37.7mmHg、HCO3- 25.4mmol/L、COHb 0%であり、意識清明のためNPPV離脱となった。【結論】HBO施行が不可能な施設でも、急性CO中毒患者に対してNPPVが治療オプションとして有効な可能性が示唆された。