[P87-1] ICUに緊急入室した整形外科症例の臨床的検討
【背景】整形外科症例は出血、呼吸、循環系などの一般的な重大合併症でICUに入室するだけでなく、整形外科に特徴的な手術手技や麻酔方法に伴う合併症により患者状態が悪化し緊急でICU管理となる場合がある。今回われわれは2014年1月から2018年7月までにICUに緊急入室した整形外科患者を臨床的に検討し、特徴的な2症例を呈示する。【当院での状況】当院では整形外科患者は多発外傷、重大な合併症または大量出血が予想される手術後の症例がICU入室の適応となっている。整形外科患者で期間中61例がICUに入室した。手術後に入室したのは59例で、そのうち42例が予定入室であり、17例が緊急入室であった。予想を上回る出血や不整脈、心疾患により循環動態が不安定になり入室した症例が9例で、呼吸状態の悪化に伴う入室が8例であった。【症例1】22歳、男性。右脛骨骨幹部骨折を受傷し、全身麻酔下に観血的骨接合術が施行され、手術終了後病棟に帰室した。術後6時間より突然意識レベルが低下し、酸素化不良となり胸写で両肺野の透過性低下を認めた。経過より脂肪塞栓によるARDSが疑われICU入室となった。NPPVによる呼吸管理とともにステロイド投与を開始した。8日目にはNPPVから離脱できた。【症例2】81歳、女性。右橈骨尺骨骨幹部骨折を受傷した。腕神経叢ブロック斜角筋間アプローチ併用の全身麻酔下に観血的骨接合術が施行された。手術は大きな問題なく終了した。全身麻酔からの覚醒時に不穏状態になったが一回換気量200mlを超えた時点で抜管した。その後も不穏状態が継続し酸素化も悪化するため再挿管しICUに緊急入室となった。一回換気量が上昇しないこと、右肺音減弱から腕神経叢ブロックの合併症としての横隔神経麻痺による呼吸障害と考えた。入室後12時間で抜管し、ICU退室となった。【結論】術後の緊急入室の理由は抜管後の呼吸困難、循環動態の悪化であった。以前より報告されていたが、整形外科に多い骨髄の操作を伴う手術において脂肪塞栓症のリスクは高くなる。また、現在上肢の手術では腕神経叢ブロックの併用が増加しており、アプローチ法によっては横隔神経麻痺を引き起こし、呼吸困難となる症例が散見される。2例とも整形外科手術後に特徴的な症例であり、ICU緊急入室の理由として念頭に置く必要がある。